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「ああ、帰って来たらお前をここからだしてやる」
「……」
「信じろ」
男はまっすぐに私を見た。
「わっちは……籠の鳥……この世界しか知らん……夜空しか見上げる事の出来ない籠の鳥でありんす」
男の盃に酒を注ぐと微笑んだ。
「外の世界は眩しすぎて……わかりんせん」
男は胸元から短刀を出すと自分の小指のをスッと傷つけた。
「何をしんさるのですか!」
私の手をそっととって指を絡ませるように握った。
「夕月は子供じみてると笑うかもしれんが……赤い糸だ」
「……赤い糸」
男の指から流れた血が私の指に絡み付いた。
私は男のもう片方の手から短刀をとり、自分の小指を少し傷つけた。
「赤い糸なら。互いに絡まなくては……意味も心もないでありんす」
「ああ……そうだな」
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