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しばらくするとさっき注文したチョコバナナパフェが届いた。
チョコレートソースのかかったバナナをスプーンですくって食べてみる。
「美味しい……」
思わず声に出してしまった。
「でしょ?」
右隣の彼が微笑みながら言った。
私はスプーンを右手に持ったまま彼の方を向き大きく頷いた。
その後、私はチョコバナナパフェを食べながら彼のことをちらちらと横目で見ていて彼にちょっとした違和感を感じた。
彼は漫画雑誌の中の同じ漫画を繰り返し読んでいた。そして彼の顔はまるで運動会の徒競走で一着になった子供のように誇らしげな顔をしていた。
私は気になったので彼に質問してみた。
「あ、あの~、その漫画って面白いんですか?」
「これ? う~ん、面白いと思うんだけどな~。僕の中では今のところ最高傑作です!」
「そうなんですか?」
「実はこの漫画、僕が描いたんです」
「え、あなた漫画家さんなんですか?」
「まあね。と言っても漫画家になりたてですけど。今回の作品がデビュー作なんですよ」
「へ~、漫画家さんなんだ……」
彼の思いもよらぬ一面を知ることができて私はうれしかった。
「ん? あなたのことどこかで見たような気がするな」
そうそう、私、あなたと初対面じゃないの。お願い、気づいて……。
「ちょっと待ってくださいね、今思い出しますから。どこかで会っているはずなんですよ……」
そう言うと彼はおもむろにたばこに火を付けた。
たばこを吸いながら彼が私の顔をじっと見つめる。私は目をパチクリ。見つめられるとドキドキする。
「う~ん、思い出せない。どこかで会っているはずなのに……」
彼はたばこを吸い終え、二本目のたばこを吸おうとたばこの箱を開けた。
「あ、カラだ。買いに行かなきゃ……」
彼は空っぽになったたばこの箱をじっと見つめる。
「あ……」
彼はたばこの箱と私の顔を交互に見つめる。
「いらっしゃいませ」
私は挨拶をした。
「七十六番のたばこを一つください」
彼は私の顔をじっと見つめながら私に注文した。
「はい、こちらの商品でよろしいですか?」
私は持っている七十六番のたばこを彼に一本差し出した。
「はい」
彼は私の差し出したたばこを受け取り口に咥えるとすかさず火を付けた。
ゆっくりと煙を吸い込みゆっくりと煙を吐き出す。
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