1/3
前へ
/15ページ
次へ

『たいへん、暗くなっちゃう!』 お姉ちゃんはそう言うと、私の手をひっぱって信号のところに来た。 青になってからも何度か両方を確認して、佐々木電気の方に渡った。少し歩いて、 『ここだ。』 と呟くと、私の方を見る。 『あーちゃん、この溝にクランベリーがあるの。』 やっぱり買ってたんだ。買いに行く途中じゃなくて、買って帰る途中だったの? お姉ちゃんに言われて溝を見る。 セメントの蓋がついている。 『あの時、この蓋がなかったの。お掃除のためにずらされてた。』 そうだったんだ。 「この蓋の下にあるの?」 お姉ちゃんは頷いた。 「瓶、割れてるよね?」 『割れてたら良かったんだけど、割れなかったの。蓋が空いてたこの溝の側溝のところに入っちゃたの。瓶より少し幅がある丸い側溝。そこにスポッて。』 そんな奇跡的なこと。 『あーちゃん、お願い。あの瓶を取って。』 え?そんなに欲しいの?なんで? それにこんな蓋、私には動かせない。 お姉ちゃんは泣きそうな顔で私を見る。 蓋を動かそうとしたけれど、びくともしない。 どうしたら・・。 『篠原、サボリ。』 声がした。クラスメートのショウタ。 『テスト前に余裕だなぁ。』 ああ、もうすぐテストだ。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加