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Ⅱ
『たいへん、暗くなっちゃう!』
お姉ちゃんはそう言うと、私の手をひっぱって信号のところに来た。
青になってからも何度か両方を確認して、佐々木電気の方に渡った。少し歩いて、
『ここだ。』
と呟くと、私の方を見る。
『あーちゃん、この溝にクランベリーがあるの。』
やっぱり買ってたんだ。買いに行く途中じゃなくて、買って帰る途中だったの?
お姉ちゃんに言われて溝を見る。
セメントの蓋がついている。
『あの時、この蓋がなかったの。お掃除のためにずらされてた。』
そうだったんだ。
「この蓋の下にあるの?」
お姉ちゃんは頷いた。
「瓶、割れてるよね?」
『割れてたら良かったんだけど、割れなかったの。蓋が空いてたこの溝の側溝のところに入っちゃたの。瓶より少し幅がある丸い側溝。そこにスポッて。』
そんな奇跡的なこと。
『あーちゃん、お願い。あの瓶を取って。』
え?そんなに欲しいの?なんで?
それにこんな蓋、私には動かせない。
お姉ちゃんは泣きそうな顔で私を見る。
蓋を動かそうとしたけれど、びくともしない。
どうしたら・・。
『篠原、サボリ。』
声がした。クラスメートのショウタ。
『テスト前に余裕だなぁ。』
ああ、もうすぐテストだ。
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