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「ちょっといろいろ忙しくて。」
『忙しそうには見えないなあ、こんなとこでぼっーとしてよぉ。』
「ショウタは部活サボリ?」
『だからテスト前だって。ボケてる?』
「男子の力なら、この蓋動くかもと思っただけ。ボケてない。」
ショウタは、私の視線を追ってセメントの蓋を見た。
『鍵でも落としたか?』
そう言うと、鞄を道路に置いて、セメントの蓋を動かそうとしてくれた。でも簡単じゃない。
『こんなもん、素手ではむりだろ。』
そう言いながら、隣の少し小さめの蓋を見る。
『まずこっち。』
小さめの蓋は、少し動いて外れた。
『よっし!』
ショウタはそう言うと空いた部分に片足を入れた。さっきとは違って持ち上げるみたいに、重たいセメントの蓋を。蓋が上がった。
『どら、見ろ、鍵あるか!』
私は道に寝転んで、お姉ちゃんが言った側溝を見る。
あった!鍵じゃないけど。
瓶の蓋が側溝を塞いでいる。
『早くしろ~』
というショウタの声を聞きながら、片手を入れて指先だけで側溝を塞ぐ瓶を手前に引いた。
少しずつ、奥に押してしまわないように。よく見えない。
『はーやーぐーじーろーーー』
ショウタの声が震えてきている。
もうちょっと。
掴める!片手で瓶を取った。
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