12人が本棚に入れています
本棚に追加
『ごめん、驚かして。あのさぁ、どうしてもあーちゃんにお願いしたいことがあるんだ。今日、朝8時に佐々木電機さんの交差点に来て。』
佐々木電機の交差点、お姉ちゃんが事故にあった場所。
3年前の昨日。私のせいで。
体を起こした。お姉ちゃんはいなかった。夢?
3歳年上のお姉ちゃんは、お菓子作りが趣味だった。
あの時も私の誕生日ケーキを作ってくれている途中だった。ちょっと前に私が、クランベリーの砂糖漬けがのってるケーキが食べたいって言ってたことを、きっと思い出したんだ。
だから。
8時っておかしいよね。学校の時間。さぼれってことかな?
今年もお母さんにケーキは?って聞かれて、
いらないって答えてる。
昨日の夢でしっかり思い出したしね。
誕生日は贖罪の日。これから一生。
制服のまま、二度と来たくなかった場所に来る。
この交差点で、お姉ちゃんともう一人の人がトラックにはねられた。
昨日、お母さんとお父さんが供えた花がある。私は来ていない。
ぼっーと立っていたら、後ろから声がした。
『おまたせ!』
お姉ちゃんの声。
血だらけのお姉ちゃんがいたらどうしよう。私を迎えに来たのかな。やっぱり私のせいだから。
恐る恐る振り返った。
お姉ちゃんは高校の制服姿だった。
本当はその制服を私がお下がりでもらうことになってたんだよね。
最初のコメントを投稿しよう!