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お姉ちゃんが黙っているから、なんだかよくわからない。
そのとき、後ろから声がした。
『待って。』
能勢さんが追いかけてくる。
私はちょっと怖かったけど、お姉ちゃんがまた私の後ろに隠れるから。
追い付いた彼がちょっと息切れしながら言った。
『か、観覧車に乗ってくれない?』
???
ビルのてっぺんに観覧車がある。
昔、家族で乗ったことがある。お父さんとお母さんとお姉ちゃんと。子供の頃。
私はわけがわからないまま、能勢さんと観覧車に乗っている。私の隣にはお姉ちゃんもいるけど、能勢さんには見えないはず。
彼は何も言わずに景色を見ている。
お姉ちゃんはずっと下を向いている。
私は能勢さんと反対側の景色を見ていた。
『昔、好きな子がいたんだ。』
能勢さんが景色を見たまま、いきなり話しだした。
『お菓子作るのが上手くて。彼女が大学生になったら、告白しようと思ってたんだ。キーホルダーがほしいと言ってたのは、彼女が大学に合格したら合鍵を渡そうと思ってたから。』
能勢さんは相変わらず景色を見たまま言う。
その時、お姉ちゃんが顔をあげた。
ちょっと驚いた風に見える。私は黙っている。
『俺の誕生日の前の日に、事故で逝った。』
能勢さんが好きだったのは、100%お姉ちゃんだね。
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