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今日が能勢さんの誕生日なんだ。私と一緒の日。
二人は付き合ってたのかな。
『もっと早く告白すれば良かったんだ。俺がもたもたしてて。』
能勢さんは窓から視線を外して、足元に落とした。
付き合ってなかったけど、両想いだったんだ。
お姉ちゃんも足元を見ているけど、彼と違ってちょっと嬉しそうに見える。
『彼女はこの観覧車に乗りたいって言ってた。恋人ができたら二人で。』
能勢さんはやっぱり下を向いて言う。
ごめんね、オジャマ虫で。
お姉ちゃんは両手で顔を覆った。
泣いているのかと思ったけど違った。
『俺の誕生日は、贖罪の日になった。あれから。』
私と一緒。
能勢さんもクランベリーのケーキを待っていたのかな?
私たちはそのまま黙って観覧車に乗っている。
目の前の能勢さんを見つめているお姉ちゃんを、視線の端に感じる。
きっと大好きだったんだね。この人のことが。
「あなたのせいじゃないです。お姉ちゃん、きっとあなたのこと好きでした。」
私の言葉に、彼が顔を上げる。
お姉ちゃんは隣で『キャ~』と小さく言って、両掌で顔を隠した。
「だから、きっと能勢さんには笑っていてほしいと思ってると思います。」
ほっぺたを押さえたまま、隣でお姉ちゃんが頷いている。
彼は、『そうだといいな』と少し笑った。
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