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ただ、音飛びして何度も同じところを流し始めたCDみたいに、あたしの中で鳴りやまない言葉があった。
『哲也先輩のこと、忘れたいんだろ。なら俺のこと利用すればいい』
──あの意味のわからない吐き気が少しでも薄まるなら……と思っただけで、なんて蠱惑的な響きを持った言葉になってしまうのだろう。
これでも一応、恋人関係になった男の人以外とは寝たことがない。
その程度に、あたしは思い切ったことなんて知らない女だ。
宮沢賢治郎に、そんな甘いことなんて求めちゃいないけれど。
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