卵が先か鶏が先か

5/40
前へ
/40ページ
次へ
   ただ、音飛びして何度も同じところを流し始めたCDみたいに、あたしの中で鳴りやまない言葉があった。 『哲也先輩のこと、忘れたいんだろ。なら俺のこと利用すればいい』  ──あの意味のわからない吐き気が少しでも薄まるなら……と思っただけで、なんて蠱惑的な響きを持った言葉になってしまうのだろう。  これでも一応、恋人関係になった男の人以外とは寝たことがない。  その程度に、あたしは思い切ったことなんて知らない女だ。  宮沢賢治郎に、そんな甘いことなんて求めちゃいないけれど。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

206人が本棚に入れています
本棚に追加