曇る空の国で

3/8
前へ
/8ページ
次へ
デカいウォッカの瓶とキウバサの入った袋を持ち、おしかけてきたこの男はピヨトル。典型的なポーランド人に見られる、色素が薄くそれでいて鍛えてあげられたガタイのいい身体。このピヨトルという男は俺の住むこの寮生ではないのだが、ある日ふらっと入ったバーで知り合い、何故か意気投合してよく遊びに来るようになったのだ。 「ごはん食べるといってもお前の持ってるそれはただのソーセージだろ?肉は栄養にならんぞ。」 という俺に対し、 「キウバサは、おいしいです。ごはんを、たべましょうか。」 と強引にその大きなソーセージの塊を机に置くピヨトル。まったくこいつのマイペースさには、いつもやられる。 「今日はまたなんで急に押しかけてきたんだ?」 そう、問いかける俺にピヨトルはニヤッと笑いながら 「宿題、もう、できましたか?」 と返す。そうだ、忘れていた。ヤツに先週、ポーランド語の宿題がわからないと愚痴っていたのだった。 「いや、まだだ。今ちょうどやってたんだがもう何がなんだか。」 「Ok.休みましょう!飲みましょう!はい、これ。」 ピヨトルはそう言いながらウォッカを注いだ小さなグラスを渡してくる。 やれやれ、こうしてヤツのペースにはまっていくのか。呆れながらも俺は心の何処かで安堵していた。そうだ、こういう人との交流って前はなかったよな。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加