曇る空の国で

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日本に暮らしていた時は、大学へ行き、授業を受け、バイトをして家に帰るという生活で、そこそこ楽しくはあった。しかし、どこかでこの日常を捨て去り、ある日突然、フッといなくなってしまったらどうなるのだろうという感情もそこにはあった。大学を卒業したらどうするのか。社会人になり、結婚をして、家族ができ、やがては死んでいくのか。俺がいなくなったら、誰が悲しむのか。家族か。しかし、せいぜい俺のまわりの人々だけだろう。そんな感情が、やがては大きく膨らみ、現実化し、その結果大学へ行くこともやめ、ひたすら自分の殻にこもることとなってしまったのだろう。俺はそんな以前の自分と、今の自分を比べ、行く文化、変わったのだろうかと自分に問うのだった。 「ピヨトルっていつも楽しそうだよな。でも、なんか別にそれも嫌な感じじゃなくて。なんて言うかなぁ、素直だよね。」 つい、思ったことが口に出てしまった。 「楽しい?ぼく?それはですね、えぇっと…」 日本語に詰まるピヨトルに、「英語でいいよ。」と促す。 「僕は楽しいのが好きなんだ。でも、僕だって楽しくない時がある。」 「えぇ、そうなんだ。どんな時?」 「僕は昔、イジメられていた。 」 「そ、そうなのか…!?」 俺は、まずい、地雷を踏んだかと躊躇した。こういうことにはあまり触れない方が良いと思う。 「ピヨトル、そのことについてはだな、また今度ゆっくり…」 という俺の声を無視して、ピヨトルは語りだした。
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