第2章 夜ちゃんのさほど華麗でもない性的遍歴

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何だかんだ言っても将来性ある大学生らしく(うちの近辺では優秀と思われてる国立大の学生だった)、避妊はきっちりしてくれてたのだけは救いだった。中学生を妊娠させたら大ごとになることくらいはちゃんと承知してた訳だ。 奴が卒業してこの街を去ってくれるのをひたすら待つしかないのか、と諦めの境地でいたら思いがけない展開で救われた。母親が転職して勤務地が変わったのだ(彼女はシングルマザーの看護師だった)。だいぶ離れた場所にある田舎の病院に移ったのでとても通えず、わたしたちはめでたく引っ越すことになり悲惨な事態は突然収束した。 しばらくの間、平和な心安らぐ田舎ライフが続いた。と言っても割に閉鎖的な人間関係には最後まで馴染めず友達って友達もできないままだったけど。一人で孤立してても誰にも構われなくても、身体の大きな大学生に夜となく昼となく呼び出されて(母親が夜勤の日は夜に呼びつけられることもあった)身体中ごちゃごちゃと弄くり回される日々より断然この方がいい。 わたしは問題の本質を理解してなかった。とにかくまだこの頃は。やっと最近になってからだ、そのことがはっきりとわかったのは。はぐれ者の女子は必ず捕食者の目に留まる運命にある。奴らは集団から脱落した弱い個体を決して見逃さない。 女の子たちがトイレに行くにも連れ立ってるほど群れてることを周囲に見せつけてるのはきちんとした訳があったんだ。トムソンガゼルやしまうまが群れをなしてるのと同じ。男たちに自分は脱落してない、襲撃は効果がないって知らしめる効果があるんだ。 そのことを知ったときしみじみ自然って、本能ってすごい!と感嘆したものだ。この世界に無意味なことなんてないんだなぁ…。 高校は公立で、そこの地元で一番の進学校に入ることができた。友達もいなくて時間を潰すのもままならず、ちょっと本気で勉強する気になったので。一応そこそこ勉強のできる子が集まってたから荒れてるとかはなかったけど、敷地は無駄に広いのに人口密度が低くて何だかからんとしてるってイメージだった。 二年生の時、放課後にひと気のない体育館で倉庫に引きずり込まれて知らない男の子にいきなりやられた。 学校の中は安全だと思い込んでたからさすがにショックだった。そりゃ誰もいない場所に一人で行ったけど、更衣室に忘れ物を取りに行こうとしただけだ。
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