第2章 夜ちゃんのさほど華麗でもない性的遍歴

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何が間違いだったのかって思い返すに、多分最初から全てが間違ってたんだろう。 初めての経験は中一のとき。近所のお兄さんの部屋で無理やりやられた。確か向こうはその時大学生だったと思う。漫画や小説やDVDが山ほどある部屋で、うちみたいな家であまり構われない子どもたちの溜まり場みたいになっていた。 普通なら今時、そんな風に自分の部屋に小中学生を出入りさせてる若い男は近所の噂の的になるしもしかしたら警察に通報されるかもしれない。でも、そいつの部屋に通って思いおもいに漫画を読んだりDVDでアニメや映画を見せてもらって時間を潰すような子は、親が生活に追われてて忙しくて放ったらかしにされてるような子ばっかりで、むしろ危ない場所に行かれたり繁華街で補導されるより安心とばかり見て見ぬふりで黙認されていた。大抵いつ行っても誰かしら他の子がいたから、そういう意味でも皆何となく大丈夫な気がしてたのかもしれない。 中学生になってしばらくした頃、多分夏休み明けだったと思う。学校に行くの気が進まないなぁ、とばかりに遅刻確実の時間帯にのろのろ通学路を歩いてると、コンビニから出てきたそいつに出くわした。 あまり一対一で話した記憶はそれまでなかった。自分のことを認識されてるって意識もなかったから名前を呼ばれてちょっとびっくりした。 「ヨリちゃん。こんな時間にどしたの?もう遅刻じゃないの。学校行かなくていいの?」 「なんか。…あんまり、行く気しなくて。どうしようかなぁ、と」 電話がかかってきてたらどうせ誰も出ないから病院行ってました、って言えばいいし。夜に帰ってきた母親に気分が悪くて休んじゃったって言って欠席届は後出しすればいい。母も追及するのが面倒らしく、あまり煩いことは言わなかった。 その男(余談だが、ミツマタという名前だった。今思い出した)はく、と片眉を上げた。 「そんな制服姿でうろうろしてたら補導されちゃうよ。うち来る?今から」 補導は勘弁だ。そういう面倒はうちの母が絶対、滅茶滅茶嫌がる。でもさすがにちょっと躊躇した。 子どもを狙う大人の男がいるってことは何となくだけど知ってる。家では何も言われないけど、学校では知らない人についていかないように何度も話があった。 でもこの人は知らないひとじゃないし。子どもに変なことをする人ならとっくに噂になってる筈だ。
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