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「何言ってんだよ、お前だって実はいいんだろ。いつもすげー濡らしちゃってさ…。こんなエロい女だって学校の奴らは絶対気づかないだろうな」
そうは言っても当時の自分はまだセックスの良さみたいなものは全然感じていなかった。
LINEに気づかない振りでスルーしてると(結局連絡先は交換させられた)がんがん教室に来るし、とにかく人目が気になるので応じるしかない。抗うのも面倒で、もうこいつがわたしって玩具に飽きるまで相手してやればいいやと開き直った。ただ一点どうしても譲れないことを除いては。
数回そんなことが続いたある日、わたしは四阿で奴の目をまっすぐ見据えて鞄から出した箱を突きつけた。
「これ。…以後、どんな時も、絶対つけて。これなしならもう二度とやらない。そこはちゃんとして」
初めて自分で買った避妊具の箱。奴は怯んだように目を瞬かせてそれを受け取った。
「これからは自分で責任持って用意して。てか、わたし以外のひととする時もちゃんとしなきゃ駄目だよ。中絶費用全額出せるってんならまだしも…、いや、それでもやっぱ駄目。女の子の身体に何かあったら責任取れないでしょ」
奴はわたしの顔を見つめて口ごもるように言った。
「もし万が一の時は。…産んでも、いいよ。俺ちゃんと働くし」
ふざけんな。わたしはきっとそいつの顔を睨めつけた。何であたしがお前なんかとこんなとこで人生終えなきゃなんないんだ。
わたしは絶対、こんなとこで終わったりしない。必ずここを出て行くんだ。自由な場所に。ここじゃないどこか。誰かの子どもとして生きるんじゃなくて、自分のための部屋に住んで、自分で生活費を稼いで。他人の(てか、母だから家族だけど、実際は)家の肩身狭い居候じゃなくて。
誰にも邪魔されない一人の空間と生活が欲しい。そのためなら何でもするんだ。あともう少しでここから脱出できるっていうのに。
あんたなんかに足引っ張られる訳にいかないんだよ。
「…それは駄目。お互いこれからの人生があるし。まだ未熟だし、責任取れる筈ない。そういう順番を無視したことは止めよう。子どもじゃないんだから」
感情をぐっと抑えてとにかく何とか冷静な声を出すと、奴は大人しく頷いた。
以来、きちんと避妊こそしてくれるようにはなったが相変わらず手を替え品を替えセックス三昧なのは変わらなかった。
「やらしい身体だな、ぐちょぐちょじゃん…もっと声出せよ。誰にも聞こえないよ」
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