第1章 はぐれ女子、野性の王国を行く

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そんな息苦しさを感じさせるまでもなく、人間関係は想像以上に希薄だった。それより普段から声をかけてくれるような子たちはむしろ皆必要以上に親切だし、わたしが孤立してると見ると気を遣って仲間に入れたり話を振ったりしてくれる。 もっと突っ放されても正直どってことないんだけど。幼少期から一人で行動することはデフォルトと言って差し支えないし、ぶっちゃけてしまえばその方が断然楽だ。 でも、彼女らからしてみたらあまり自分から寄って来ないわたしって存在は少し気掛かりらしく、こうやって機会がある毎に誘いの声をかけてくれる。学生時代は周りの目も気にせず平然と孤立していたわたしは改めて内心で感心する。そうか、女の子ってやっぱり基本的に固まったりつるんでグループ作ってるのが基本的な生態なんだな。 逆にいうと今現在のわたしの状況は、これまでそういう部分が欠けてたことに起因する結果だったのか。 勉強になるなぁ、と納得しつつ、ここはひとつ無難に受け応えなきゃと算段する。社会人生活二年目、段々お互いの性格もわかってきて同期の女の子たちの殆どは下の名前で呼び合うくらい親しさを増してきている。彼女らと同じように本当の意味で友人同士になるのは気が進まないけど、あまりに人と交わらない姿勢が歴然としてるとやはり目立つし周囲の注意を引きがちだ。てか既に最近、ちょっとそうなりかけてる。 こうやって飲み会のたびに敢えて声をかけられることが多くなったのも、『滅多に顔を出さない人』として認識され始めてるからだろう。頭の何処かでアラームが微かに鳴り始める。とにかく変な意味で目立つのは避けなければならない。 今日は水曜日。あの場所に行く予定もないし。何よりこれだけの人数の顔見知りの女の子たちが参加するのなら、トラップや危険も少ない穏当な飲み会であることは多分確実。二次会にまで付き合わなければまず絶対安全なはずだ。 こういう無難な機会に顔を出すことで他人を敢えて遠ざけてるわけじゃない、ってとこを見せておかないと。程々に参加して、程々に距離を置く。それができないと何でもない普通の女の子として目立たず生きていくこともままならないだろう。 わたしは控えめな笑顔を浮かべ、小さく頷いた。 「みんなが行くなら。…何とか仕事終わらせて、わたしも行こうかな。今日は」 事前に当たりをつけた通り、少なくとも一次会はごく普通の賑やかな飲み会だった。
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