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東京本社に配属された同期はやや男の子が多めだが、それは会社全体の傾向でもある。というか、全社的にはだいぶ男性社員が多い。しかし入社二年目の時点では女の子も相当の割合を占めるので、男っぽい体育会系乗りの雰囲気の飲み会ではなかった。どちらかというと大学のクラスコンパみたいな感じに近い。
とは言え油断は禁物だ。わたしは人柄の信頼できそうな、馴染みの女の子たちからなるべくはぐれないよう細心の注意を払って時間をやり過ごすつもりだった。よく知らない人物は駄目、例え女の子でも。それは経験上身に沁みて実感してる。
最初のうちはそれで何とかなった。居酒屋の貸切の座敷席で、仕事を済ませて到着した順に奥から詰めて座り、何となく気の置けない同士近寄って陣取る。いつもの昼食で顔を合わせるメンバーに入れてもらい、周囲から浮かずに融け込むことに成功した。
しかしまあ、そこは同期会。普段交流のある相手とずっと話し込んでるだけじゃ開催する意味がないとばかりに、ある程度人数が揃ったところで幹事が張り切って籤を取り出した。わたしは人知れずそっと肩を竦める。やっぱシャッフルするのか、席。
同期同士知り合いを増やして交流を深めることが目的な訳だから仕方ないといえば仕方ない。個人的には社内の知り合いなんかこれ以上全然必要ないけど、そんな人間は概ね少数派だろう。別の部署の同期との繋がりは増えた方が仕事だってやり易くなるし。
婚活パーティーみたいにあからさまに男女交互に席を決められたりしなかっただけ増しだったけど。それでも同じテーブルに着いたメンバーは結果的にほぼ男女半々だ。合コンでもあるまいしなぁ、と少しずつ遠慮がちにグラスに口をつけながら苦々しく考える。
程なくして数人の賑やかな子たち主導でその場は盛り上がり始めた。わたしはひたすらにこにこして話を聞いてる振りをする。とはいえ頭の中では、これどのくらいで切り上げようかなぁ、とか。タイミングを見てさっさと抜けるにしても、あまりに早い時間だと却って目を引くし…。
引き際を見誤ると、二次会に当然の如く参加する流れに乗せられかねない。全体の人数が減ったりアルコール度数が高くなったりするとうっかり変なところに嵌まり込む危険も高まる。無難な時点で目立たずフェイドアウトしないと。
アルコールとドラッグはご法度。そのフレーズが頭の中を過ぎり、人知れずつい苦い笑みを浮かべる。
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