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だが木葉刑事は、まだ9月だから暑中見舞いの頃と思い。
「不思議なのは、これだけしっかりした人なのに・・・。 返事を出すのに使った便箋の類が、この部屋に一つも見当たらないのは・・何故ですかね」
飯田刑事は、奥の間を見て。
「返事を書くだけでも、そこそこ使うだろうからな。 切らせたか?」
「然し、飯田さん。 鑑識の報告資料には、家計簿の間に挟まるレシートが映ってましたが…。 事件前日となる日に行ったホームセンターでの買い物でも、便箋なんて買ってませんよ~」
「ふむ。 なら・・木葉、それを確かめるか?」
「店への聞き込みをする為にも、署に戻ってレシートを調べる側と、手分けします?」
「そうだな・・夜に成ったし。 別れるなら、直ぐに行こう」
此処で木葉刑事は、ニヤッとすると。
「負けた方が、遠出ッスよ」
頷いた飯田刑事は、何と二人してジャンケンを…。 勝った木葉刑事は、警察署へ。 負けた飯田刑事は、被害者の職場へと。
その様子を眺めていた若い所轄の刑事達は、細かい事だけを気にして遊んで居る様に見えた。
警察署に戻る木葉刑事と手塚刑事は、ホームセンターに向かう飯田刑事に車を貸した。 そして、二人して歩きながら戻る最中、駅から伸びる街中を通りすがり。
「おい、木葉よ」
「何ですか、師匠」
「お前は、この一件を一課長と同じく事件と見るか?」
夏の夕暮れを黒く染める夜空、それを見上げる木葉刑事は。
「物証や遺留品が無くなった時点で、殺人以外でも事件ですよ」
すると、苦笑いする手塚刑事で。
「確かに、そうだな…」
「手塚師匠の言いたいことは、良く解りますよ。 事件としても、帳場を作るまでの事件じゃない・・ですよね?」
「まぁ、な」
「でも、傷害事件と被ったら、チョット厄介な事件に成りそうッスよ」
「ん~、俺は別の犯人が居ると睨んでるんだがな~」
二人の意見交換は、だらだらと警察署まで続く。 帳場の立つ警察署に戻った木葉刑事は、鑑識員が働く所轄の鑑識課部屋に入ると。
「すみませ~んが。 遺留品として押収した、被害者の家計簿を見せて下さい」
と、声を掛けた。
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