第二部:秋冬の定まり。

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「はい、飯田さん。 あ、そっちはどうでした? はい・・はい、はぁ~~~やっぱり。 いえ、ね。 被害者は8月の最初、便箋を二冊も買ってました。 えぇ、おそらく持ち去った理由は、遺書か、何らかの手紙が在った為では?」 意見交換をして電話を切る木葉刑事は、 「手塚師匠、今日はもう上がりましょう」 と、切り上げを打診した。 時間を見る手塚刑事は、もう夜の9時過ぎと知り。 「んなら~木葉、ウチに泊まってけ。 柔道場に御案内だ」 「ゲェっ、寝技で絞め落とすとか、ナシッスよ」 「はっ、お前みたいな細い奴なんざ、絞めたら首の骨が折れるわい!」 「でも、なぁ。 着替えが、本庁なのになぁ~」 「あ゛っ? 何を抜かしてやがるよお前っ! 一課の刑事がそんな事で、仕事が務まるのかっ! とにかく来いっ、説教してやるっ」 「うそぉ~ん」 「シミったれた口を利くなっ」 部屋を出ても聞こえる二人の話し声。 だが、二人の様子をぼんやりと眺める鴫鑑識員は。 (寝技・・・、掛け合って戯れとうな…) こう思いながらうっとりしてする。 そんな彼女を遠目に見ていた30代の男性鑑識員が、配属されたばかりの若い警視庁の男性鑑識員に。 「なぁ、あの美人さんは、結婚してるのか?」 作業の最中に声を掛けられた若い鑑識員は、何事かと周りを見ては鴫鑑識員を見て。 「あ、鴫さんですか。 いや、結婚したいと声を掛ける人は多いみたいですが…」 「彼氏も居ない訳だな」 「あ、いや・・・好きな人は居るみたいですよ」 「ほう、どうせキャリア系だろうな」 「多分は」 彼女を、他の鑑識員が隠れ見ている。 チョット水商売風と云うか、大人の恋愛にも慣れた色気が溢れんばかりの彼女には、誰もが憧れるらしい。 だが、想う相手が木葉刑事と知れば、誰もが嘘と信じないだろう。 彼女の気持ちも知らない木葉刑事は、手塚刑事とコンビニに行く間、戻る最中、寝るまで説教を食らって飯田刑事を笑わせていた。
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