第二部:秋冬の定まり。

13/23
前へ
/23ページ
次へ
さて、次の日。 朝から曇り、湿気が籠もる嫌な気候だった。 事件現場から範囲を広げて聞き込みをする木葉刑事と手塚刑事は、怪しい曇り空の下で汗を拭きながら足を使う。 そんな中、スマホに来た着信音を聴いて、チラッと画面をタップし覗けば。 ー う゛ぉーっ、映像を観るのは嫌じゃーーーっ!! - 傷害事件を追う里谷刑事からの愚痴が、篠田班の共通通信に流れる。 見て苦笑うしか無い木葉刑事だが。 ‐ 里谷さん、鑑識から犯行時刻が割れたとか来ました? ‐ と、送ると。 ‐ 防犯カメラの映像と照らし合わせても、一週間ぐらい前じゃないか~って。 冷房を掛けっぱなしだった所為で、干からびる様に成ったらしいけど。 一方で、日昼は陽が当たってたから、厳密な割り出しは難しいみたいよ~。 嗚呼っ、アイス食べたい。 ‐ その返答を見て、テンプレート的な文章の物言いにて応援コメントを返した木葉刑事だった。 さて、蒸し暑い最中の昼下がり、午後2時を回った頃。 飛び込みで入った中華食堂で、手塚刑事と二人して冷やし中華とミニチャーハンを食べる。 からしを冷やし中華にたっぷり混ぜる手塚刑事は、 「なぁ、木葉よ。 昨夜と同じ質問になるが、お前はこの事件をどう観る?」 上湯スープの味わいが効いたチャーハンを食べる木葉刑事は、昨日と同じ質問に、手塚刑事の内心には‘自殺’の二文字が強く在ると察しながら。 「じゃくはいッスよ。 ・・師匠に・い・・意見なんて…」 噛む合間に喋るそんな木葉刑事に、 「ルッセェ。 噛みながら喋るンじゃねぇ。 食べる合間に喋れ」 当たり前の如く叱る手塚刑事。 「ほい、すいません」 「俺はな、木葉。 あの死体は、絶対に自殺だと思ってる」 前を見て料理人の汗を見る手塚刑事は、確信を込めて言う。 食べる木葉刑事は、チャーハンを食べるまで手塚刑事の意見を聴いていた。 そして、冷やし中華に移る前に。 「自分は、ある種の他殺だと、思います」 確信した涼やかな物言い。 手塚刑事は、“意見が食い違った”、と思い。 「あの遺体は、殺された・・ってか?」 ‘からし’が苦手な木葉刑事は、器の端となる横に避けて。 「例えば、言葉で責めて自殺に追い込んだり、そうなる様に強要したりするならば、それもある種の殺人ッスよ」 「お前は・・仕向けられたって云うのか?」 冷やし中華を一啜りした木葉刑事は、噛んで飲み込むと。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加