3人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、次の日。 朝から曇り、湿気が籠もる嫌な気候だった。
事件現場から範囲を広げて聞き込みをする木葉刑事と手塚刑事は、怪しい曇り空の下で汗を拭きながら足を使う。
そんな中、スマホに来た着信音を聴いて、チラッと画面をタップし覗けば。
ー う゛ぉーっ、映像を観るのは嫌じゃーーーっ!! -
傷害事件を追う里谷刑事からの愚痴が、篠田班の共通通信に流れる。 見て苦笑うしか無い木葉刑事だが。
‐ 里谷さん、鑑識から犯行時刻が割れたとか来ました? ‐
と、送ると。
‐ 防犯カメラの映像と照らし合わせても、一週間ぐらい前じゃないか~って。 冷房を掛けっぱなしだった所為で、干からびる様に成ったらしいけど。 一方で、日昼は陽が当たってたから、厳密な割り出しは難しいみたいよ~。 嗚呼っ、アイス食べたい。 ‐
その返答を見て、テンプレート的な文章の物言いにて応援コメントを返した木葉刑事だった。
さて、蒸し暑い最中の昼下がり、午後2時を回った頃。 飛び込みで入った中華食堂で、手塚刑事と二人して冷やし中華とミニチャーハンを食べる。
からしを冷やし中華にたっぷり混ぜる手塚刑事は、
「なぁ、木葉よ。 昨夜と同じ質問になるが、お前はこの事件をどう観る?」
上湯スープの味わいが効いたチャーハンを食べる木葉刑事は、昨日と同じ質問に、手塚刑事の内心には‘自殺’の二文字が強く在ると察しながら。
「じゃくはいッスよ。 ・・師匠に・い・・意見なんて…」
噛む合間に喋るそんな木葉刑事に、
「ルッセェ。 噛みながら喋るンじゃねぇ。 食べる合間に喋れ」
当たり前の如く叱る手塚刑事。
「ほい、すいません」
「俺はな、木葉。 あの死体は、絶対に自殺だと思ってる」
前を見て料理人の汗を見る手塚刑事は、確信を込めて言う。
食べる木葉刑事は、チャーハンを食べるまで手塚刑事の意見を聴いていた。 そして、冷やし中華に移る前に。
「自分は、ある種の他殺だと、思います」
確信した涼やかな物言い。 手塚刑事は、“意見が食い違った”、と思い。
「あの遺体は、殺された・・ってか?」
‘からし’が苦手な木葉刑事は、器の端となる横に避けて。
「例えば、言葉で責めて自殺に追い込んだり、そうなる様に強要したりするならば、それもある種の殺人ッスよ」
「お前は・・仕向けられたって云うのか?」
冷やし中華を一啜りした木葉刑事は、噛んで飲み込むと。
最初のコメントを投稿しよう!