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だが、二人のこの予想は的中した。 夜の9時過ぎ。 豊島区に住む若者が、赤羽警察署に連行された。 見た目も少し気弱い感じの頭が良さそうな、21歳の大学生で在る。 だが、取り調べに携わる飯田刑事は、見つかった証拠を突き付けて語られる真実に、その未熟な若さと云うか、潔癖さの恐ろしさを知る事と成る。
この捕まった大学生は、厳格な両親の元で真っ直ぐ育ったとか。 常に真面目で、罪や違反を行わないのが信条だった。 では、そんな品行方正な者が、どうしてこんな事に成ったのかと云うと…。 彼は、大学で法律を学ぶ傍ら、犯罪被害者支援のサークル活動をしていたそうだ。 そして、何度か関わる被害者遺族の無念を知り、あのサイトに自身も登録した。
さて、そのサイトでは、週間単位で元犯罪者が祭り上げられた。 強姦犯、放火犯、窃盗犯、詐欺、背任、横領、死体遺棄、殺人犯と、その罪状は多岐に亘る。 だが、真面目が取り柄の彼は、何の掲載も出来なかった。 大学で起こった暴行や傷害事件でさえ、確認する事を躊躇った。 明らかに悪い見た目の者には、素直な処でビビったのだろう。
そんな彼だが、つい先日の事。 長崎県より上京して来た後輩より、サークル活動の飲み会にて。
“ついこの間、昔に殺人犯した人を見た”
と、聞いた。
これまでサイトに登録しながらも、彼は閲覧するだけの側だったが。 これで自分も掲載をする、断罪側に回れると思った。
だが、先に述べる事として。 サイトへ登録する者に対するノルマなど、全く無い。 サイトの趣旨は、犯罪を犯しながらも逃げて居る者。 または、服役しても更正しない者への警告で在る。 誰彼と祭り上げるのは、違反の対象に成ると書かれて在る。
ならば彼は、サイトの説明の何を読んで、どう理解したのか。 その被害者の事を良くも知りもしないで、彼は自分本位に軽く調べ始めた。 そして、隠し撮りした写真で後輩に本人と確かめた後、被害者に突撃的な聞き込みを掛けた。
“貴方は、殺人を犯したのでしょう? 何で、のうのうと生きて、普通の生活をして居るんですか? 近々、貴方の事と勤め先を、ネットの或るサイトに載せます。 僕は、貴方の様に犯罪を犯しながらも、償ったフリをして平然と生きて居る人が赦せない。 天の裁きを下してやる”
と…。
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