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人の思い込みとは、こうも恐ろしいものなのか。 現実を説明された若者は、法律を学ぶ立場に在りながら、被害者の人となりを理解しようとしない。 こんな人間が弁護士や検事や裁判官に成ると知る手塚刑事は、憤りを超えて無情を感じさえした。
一方、若者の態度を見た飯田刑事は、手塚刑事を睨み付けるそんな彼へ。
「いいかい。 取り調べの時もそうだが、犯人に対して情状酌量が認められるには、事件に至る状況も在るが。 逮捕から起訴までの態度や行動に、謝罪の意識が在るかどうかが求められる」
こう言う。
すると、流石に大学生か。
「そんなことは、言われなくても解るっ」
と、強気に返してくるではないか。
飯田刑事は、そんな若者を見詰めながら。
「知っているのと理解しているのは、意味が違うぞ」
「どうゆう意味ですか」
「それならば、今の君の態度や事件の時の行動は、一体どうだ? 他人と云う周りへと迷惑を掛けまいと、世間へ詫びる遺書まで書いて自殺した彼なのに。 そんな彼の自宅を訪ね、不法な侵入から遺体を見つけたのに通報せず。 被害者より遺書を奪って。 ましてや、自殺に使った凶器を態と抜いて、殺人に見せ掛ける為に背中を刺してからそれを隠し。 最後には部屋に鍵まで掛けて、彼の死を隠蔽した。 君の行う心理は、犯罪者が自分の罪を隠す行為そのもの。 自分の為に、そうしたんだろう?」
飯田刑事と手塚刑事の話に、この大学生は己の何を見たのか。 怯える様に震えるまま、
「違うっ! 違う違う違う違う違うっ!! 僕が逮捕されたらっ、親はどうなるんだっ?! あの人は独り者だっ!! だけどっ、僕は違うっ!」
と、狂った様にこう言った。
だが、手塚刑事は、大学生へ更に‘にじり’寄ると。
「本当に、お前は親を想って、そうしたのか?」
「そうだっ!」
激しく机を叩いて、肯定する大学生。
「だったら何で、被害者の事をちゃんと調べ無かった? 何で、被害者の今を自分の目と耳で、ちゃんと知ろうとしなかった?」
「そんな事っ、必要無いっ!」
「どうしてだ? あのサイトは、罪を悔いて居ない人を裁く場所だろう? あの被害者が、今、誰を不幸にして居るんだ?」
すると、大学生は血走った眼を手塚刑事に向け。
「周りの全員だっ!」
と、吼える。
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