第二部:秋冬の定まり。

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然し、その言い訳を聴けば聴くほどに、違和感ばかりが浮かぶ手塚刑事。 「“周りの全員”? 誰の事だ?」 「決まってるさっ! 殺人を犯したなんて、普通なら他人には絶対に隠すっ!! あのアパートの大家にだって、働いて居る寿司屋だって、絶対に言って無いだろうっ?!! 大体、人殺しの握った寿司なんか、誰が美味そうに食えるんだっ! 知らずに食べてる客の方が、騙されてるのさっ」 さも知った様に、思い込みを言葉にして叫んだ大学生。 マジックミラーの向こう側で見る一課長やら管理官などの首脳陣達は、やるせない事件に成ると溜め息を吐く。 また、一番壁側に立つ八橋刑事は、その身勝手な意見に苛立ったのか。 静かに退室しようとしたが・・・、織田刑事がそれをさせなかった。 (八橋、逃げなさんな。 お前さんも長く刑事を遣るかも知れない。 嫌なことでも、ちゃんと見ておきなさい。 これも、どこにでも居る人間の姿の一つなんだよ) 鼻息を荒くしながらも、窘められて留まった八橋刑事だが。 その本音は、自殺した被害者と目の前の大学生を交換したい気分だ。 (コイツ、何様なんだよ…) 然し、その年齢的には、今時の若者に近い八橋刑事だが。 彼でさえ、大学生の心理は理解が出来ないらしい。 さて、大学生の妄想が明らかに成るにつれ、飯田刑事と手塚刑事を疲れさせた。 だが、やはり人の親と云うべきか。 似たような年頃の子供が居る手塚刑事は、何とか彼に真実を解らせ様と想い、調べ回った事を書いた手帳を開く。 「確かに、住人の全員には言って無い。 だが、寿司屋の店主夫婦にも、アパートの大家や管理人にも、被害者は事実は告げて在ったぞ」 自分の思い込みを否定する話を聴く大学生は、信じたくないから顔を背ける。 だが、手塚刑事は話を止めず。 「それから、あの寿司屋を贔屓にする客に聴いたがな。 被害者の握る寿司は、その実直で勤勉な性格が詰まったものだったとさ。 毎年、新年の挨拶や暑中見舞いと挨拶状を交わす人には、密かに被害者の過去を知る者も居たが。 君みたいに想像だけで決め付ける人は、全く居なかった。 誰に話を聴いても、被害者は気配りの利いた、立派な職人だったと、よ」 と、手帳を見せた。 だが、その手塚刑事の手帳を見ない大学生は、手塚刑事や飯田刑事を睨むばかり。 “真面目に生きてるんだから、自分が一番に正しい”
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