第二部:秋冬の定まり。

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だが、大学生は、何かに取り憑かれた様に。 「出て来るなっ、もう止めろぉぉっ! 解ったぁよぉっ!! 僕が悪かったぁっ、僕がアンタを追い詰めたのが悪かったんだっ!」 と、喚き出したのだ。 これは可笑しいと思う見張りの警察官は、鍵を取ろうとすると…。 「どうしたの。 おっきい声がしてるけど」 ひょっこりと木葉刑事が顔を見せる。 トイレが近い場所だから、丁度良いと警察官は。 「それが、あの被疑者が喚き始めまして」 飄々とした顔の木葉刑事は、 「あらら、それは不味い。 看守長を呼ぼう」 と、奥の部屋に。 見張りをする警察官は鍵を取って格子ドアを開けると、大学生の入る牢に向かう。 すると…。 「頼む・・頼むから止めてくれぇぇぇ…」 薄い毛布を被って震える若者は、牢の右隅に向かって謝っていた。 其処へ、留置場を管理する責任者の警察官が、木葉刑事も伴ってやって来た。 「どおしたっ?」 と、見張りをしていた警察官に、責任者の警官が問う中で。 牢に近寄った木葉刑事は、 「もういい、もういいですよ」 と、小さく声を掛けた。 すると…。 「あっ、止んだ」 大学生が、薄い毛布を外して身を起こす。 其処へ、一番に近付いて居た木葉刑事が。 「どうしたんだい? 夜中の3時を過ぎた、もう休みなよ」 声を掛けられた大学生は眼を充血させ、疲れた顔をそのまま引っさげて木葉刑事の元に這って来る。 「刑事さんっ、ききっ、聞こえたんだっ!」 「何を?」 「あの、ああ・あの人の声がっ! 僕に、僕に謝る声がっ!!」 近寄って来た勢いのままに、格子の間からズボンを掴まれた木葉刑事。 看守の長をする警察官以下、留置場を預かる警察官に緊張が走る。 “暴力沙汰かっ” と…。 然し、掴まれたままの木葉刑事は、大学生の目を見詰めながら。 「恐らく君は、自分の罪を見ない様にする為、正当化する様な事を取り調べでは言っていたけど。 本当は心の何処かで、既に解っていたんじゃ無いのかな」 「え?」 「自分の犯した罪のことさ。 遺体を刺したことより、物証を持ち去ったことよりも、一人の人間を自殺にまで追い詰めてしまった罪だ」 「・・・」 黙る彼が俯き、木葉刑事を掴む力が緩み。 彼は、鉄格子の前で呆ける様に成った。
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