第二部:秋冬の定まり。

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        1 9月に入った或る日。 また、新たなる事件が起こった。 その日は朝から暑く、蝉の声が都内の緑地にも木霊する。 そんな日に走らされる刑事や警察官は、何とも大変なものだと思う。 篠田班に入った新たな事件は、殺人未遂事件を起こした容疑者の父親の逮捕と、殺されそうに成った会社員の保護から始まった。 殺人未遂の現行犯として逮捕された年配者となる父親は、取調室にて椅子に座り俯いていた。 飯田刑事の犯行の動機についての質問に、年配者の父親は無念そうに肩を震わせながら。 ”娘を寝たきりにした男が、どうしても許せなかった” と、殺意の有る犯行だと認める。 一方、保護された会社員の男性は大企業に勤めるエリートなのに、自分を殺そうとした父親の訴えなど知らないと言い張った。 だが、会社員男性宅となるマンションをガサ入れすれば、異様なモノが見つかる。 それはパソコンの中に収まる動画にて、演出とは思えない暴力映像だ。 情報を調べると、その動画が法外な額で売られていたのだ。 押収された動画の中では、ゴリラだのピエロなどのマスクを被った人物が、夜遅くに歩くカップルを襲い。 男女をバットとかゴルフクラブで殴る映像が…。 今、一課の第2係に属する一斑は、その連続した悪質な傷害事件を追っていた。 篠田班長はその連絡を受けると一課長に連絡を入れた上で、父親の殺人未遂も含めて担当する班に身柄を引き渡した。 その捜査を引き渡した次の日の暑い昼下がり。 「あ゛~、ウザい事件。 あのエリート会社員ムカつくぅぅぅ…」 班の部屋に戻る里谷刑事が、ぐだ~と机に潰れる。 一方、篠田班長の前に立つ飯田刑事が。 「父親に殺され掛かった男性は仕事で大きな失敗をし、ムシャクシャした為。 辞める前に稼ぐネタを作ろうと、犯罪動画を売ることを考えたそうです。 会員制にして、既に6回ほど。 暴行、窃盗、名誉毀損をしたそうです」 デスクに居る篠田班長は、疑問が湧いたので。 「だが、何で父親にバレた?」 「それがですね。 過去にバットで襲った女性の映像をネタに、その女性を強姦し。 その様子を商品に加えようとしたらしいです」 「何て奴だ・・、それで?」
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