第二部:秋冬の定まり。

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その直後、笑いが部屋から漏れるほどで、大金について使い道のあれこれが妄想交じりで語られた。 特に里谷刑事の妄想はその一方的な度合いのが強すぎる幸せ話で、聞かされる男たちは聴くのも耐え難いと辟易とし。 ブチ切れる里谷刑事は、男が悪いと吼え捲るのだった…。 さて、この時に或る事件が発覚したが。 その事件に木葉刑事達が関わるのは、今回の下らない事件が他の捜査本部に渡った後となる。 そして、次の日の朝だった。 その日は、居間部 迅と清水 順子の第一回目の夕食会が開かれることになっていた。 その食事会には、越智水医師の他に知人として木葉刑事と里谷刑事も呼ばれた。 迅の計らいにて、順子のしたいようにさせたらこうなったのだ。 ま、唐突な展開だろうが、その経緯を簡単に説明すると、こうだ。 いつぞやの自販機前での話の二日後に、木葉刑事は越智水医師から許可を貰い、清水順子医師の連絡先を捜査二課の‘居間部 迅’に渡した。 処が、前日の昼間には、越智水医師へ緊急の高いオペの依頼が入り。 そのオペの準備や他の医師の予定を合わせると、会食に行く余裕が無くなった次第である。 そして、この日の朝一番には、或る事件の捜査本部へ篠田班を投入すると云う連絡が入る。 ま、用は事件だ。 どうやら会食の開催は、迅と順子二人きりになりそうな雲行きだ。 その証拠に。 捜査本部に向かう準備をする刑事達を前にする篠田班長が。 「里谷、木葉~、悪いが事件が殺人と想定された以上。 今夜のディナーは、後回しにして貰うかもしれん。 覚悟してくれ~」 と、済まなそうな一言が。 処が、部屋を出て行く木葉刑事は、と云うと…。 「別にイイッスよ」 その様子は、会食などどうでも良さそうなのだ。 ‘清水 順子’は美人と聞いていた市村刑事だから。 「木葉、随分と素っ気ないな。 美人相手のディナーじゃないのか?」 「いや、市村さん。 迅から店の相談をされた時、俺は絶対に‘寿司屋’だって言い張ったのに。 何で選りによって、‘高級懐石’なんだか。 正座してご飯食べるとか、庶民以下の自分には有り得ないッス」 選択された店が敷居の高い場所らしいく、自分を低い身分と認識する彼からして行く気ゼロの御様子。 「おいおい、お前さんがメインじゃなかろうが」 「付き合いたいんだから、俺や里谷さんは必要ないと思います。 二人でヨロシクどうぞ、ですよ」 「冷めてるな」
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