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「この机の配置、布団の折り畳み方や片付け方・・、カレンダーの張り方を窺うに。 この六畳と云う部屋にしては整頓され ている上に、片側の壁を基準にしている様な…」
こう意見を言うだけ言った後。
「ま、宛て推量はダメッスよね」
と、木葉刑事は席に就く。
飯田刑事と手塚刑事が疑問を抱えてモヤモヤすると同時に、警察署の署長が副署長や刑事課の課長を伴い入って来た。 警察署の雁首が揃えば、それは捜査会議が始まる合図とも云える。 刑事達が席に就いて起立の号令が掛かると、開かれた扉より足早に木田一課長が入って来た。 そして、一課長と一緒に、紫裟管理官が入って来る。 50代の管理官として、この彼は切れ者と云うより剛腕方針の遣り方が色濃い。 時々、容疑の固まらない内定者を、彼の思い込みに近い感覚で捜査する為、時には一般人に迷惑を掛ける事が在る人物だ。
また、木田一課長や現・刑事部長にはあまり好まれてない素振りが在るのは、或る事件で誤認逮捕をした為とも云われている。
さて、捜査会議が始まると、被害者の過去で一つの問題が。 この被害者は、やはり刑務所に収監されていたのだ。 その罪状は、‘殺人’。
(やっぱり)
と、木葉刑事は思う。
飯田刑事と手塚刑事の視線が直ぐに木葉刑事へと動いたのは、当然の事か。
然し、その殺人に至る内容は、良く解って無い。 事件の証拠となる調書などが焼失して失われた為、データベースに残ってないと云うことである。 また、あの色香の漂う‘鴫鑑識員’他、新任鑑識員を組する班長の進藤鑑識員は、解剖の結果を言う。
「被害者の死因は、心臓を包丁で刺した事に因る失血死です。 凶器が現状に無いので、第三者の関与が疑われますが。 この傷や被害者の手に残る傷痕などから窺うに、現時点では自他殺不明。 尚、監察医の方に因れば、包丁の侵入角度が斜め下からで、被害者の手の小指に傷が在る為、明らかな自殺した兆候である・・とこう言っています。 然し、不自然なのは背中に付いた第二の刺し傷。 此方の傷には生活反応が見当たらず、然も死後一定時間が経過してより付いたものと、監察医の解剖所見に報告があります」
話を受けた木田一課長は、今回の事件に事件性は薄いと判断したが…。 一連の報告が終わると、真っ先に口を開き。
「みんな、良く聴いて欲しい」
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