第二部:秋冬の定まり。

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さて、今回の事件を二つ纏めて担当する班長の進藤鑑識員は。 「え~今の疑問の答えになるかは解りませんが。 発見された遺体は、冷房が掛かったままの部屋に放置されており。 死亡推定時刻は厳密に算出が出来るか、微妙な処です。 また、その後に起こった傷害事件の被害者は、前からの他に、真後ろからも突き飛ばされる様に刺されて居ます。 が、被害者の衣服の傷口からは、自他殺不明の遺体から採取した血液は検出されませんでした」 と、追加の報告する。 詰まり、干からび始めた遺体の心臓を刺した刃物と、傷害で刺された被害者に遣われた凶器は違う可能が在る・・と云う事だ。 報告の全てが終わった処で、紫裟管理官は席を立ち。 「みな、事件と判断された以上、捜査に油断は禁物だ。 では、今回は捜査本部に集められたら捜査員が少ないが、じっくり取り組んで貰いたい」 として、刑事達は組み分けされる。 市村刑事、織田刑事、八橋刑事は、応援で来た所轄の刑事の6割を一緒にし、後から起こった傷害事件を追う様に言われた。 また、今回は飯田刑事と組む木葉刑事だが…。 一緒に手塚刑事と、若い二人の新任刑事が来た。 五人と成った木葉刑事達は、先ずは機捜の挙げた目撃情報の確認に動く。 九月だが、まだ残暑の厳しい日差しを浴びて、腐乱死体が発見された現場周辺の聞き込みを繰り返した。 そして聞き込みが空振ると。 夕暮れが早まり始めた5時過ぎに、木葉刑事達は再度、現場へ集まった。 さて、もう一度聴き込む大家と管理人の話では、被害者が事件を起こしたことは知っていた。 だが、二人して被害者が殺人事件を起こすなんて、どうしても考えられないと云う。 それほどに、気性の穏やかな人間が、今回の被害者だったと云う。 聴き込みを終えた後に、簡素な二間の部屋を見て回った木葉刑事は、引き出しに仕舞われた手紙の束を見る。 「几帳面と云うか・・質素な方だったんですね。 それで居て、気配りを忘れない」 ダイニングキッチンに手紙を並 べる木葉刑事は、その中身を読んでこう漏らす。 並んで立つ飯田刑事も、同じく手紙を見ながら。 「確かに、そうだな。 働く寿司屋での気配りに対するお礼から・・、挨拶伺いに対する返事まで在るぞ」
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