20 襲撃 その4

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   20 襲撃 その4

20 襲撃 その4    王宮の裏口から、ルオーの見た事もない廊下と小部屋が続く。  山積みの洗濯かごや脂じみた樽の間を縫って行き、女官長が一つの扉を開けた。  薄暗い小部屋の中で、二人の老人が立ち上がり、ルオーの前に膝をついた。 「ご無事でしたか、国王陛下!」  典礼の司『風の一位』が深々と臣下の礼を取る。 「その血は!お怪我を?」  煤で汚れ、煙の臭いをさせた、上品な銀髪の婦人、学問の館の『水の三位』が叫ぶ。  黙って首を振る、ルオー。  女官長が毛布と着替え、薄荷茶、聖餅の包みを持って入って来た。  白い下着を紅に染め、肌まで染みとおった血糊に、大人たちはぞっとした。 「・・・この血は・・・竜王様の・・・?」  ルオーは歯を食いしばってうなだれる。 「何という事を・・・何という事を・・・」 『水の三位』が怒りに震えた。 「神殿で一体、何がおこったのです?」  女官長が二人に尋ねた。 「突然の事でした。  先王陛下の葬儀の段取りをしていると、誰かが走り込んで来て、叫んだのです。 『ロザムンド皇太后が竜王様を弑し奉った。ラクロア兵がやって来る』と。  大騒ぎになりました」 『風の一位』が言った。     
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