20 襲撃 その4

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「『風』『地』『水』の神官たちがぞくぞくと神殿に集まってきました。ところが」  息をつく。 「現れたのは、近衛の長『火の一位』に率いられた近衛の部隊。  いきなり、大神官ギリアス殿に対する反乱と言いがかりをつけ、神官たちに剣を向けたのです。  逆らおうとした数十人が惨殺されました。 『火の一位』殿はそのまま神殿を閉鎖。  上位の神官たちが中に閉じ込められています」 「王宮にラクロア兵を引き入れたのも、『火の一位』殿の仕業と聞きました。  ルオーを着替えさせる手を止めずに、女官長が言う。 「近衛の長の反逆に、警護の兵たちは混乱。  そこに『水の一位』殿に取り入っていた男、セネカが竜王様の御遺体を王宮前広場に晒し、兵たちに見せつけたのです。  士気は喪失し、瞬く間に王宮は皇太后の名のもとにラクロア兵に制圧されました」 「皇太后ではございません。  畏れ多くも竜王様を弑し奉った首謀者は、大神官ギリアス」 『水の三位』がしっかりした口調で言う。 「ギリアスが皇太后、『火の一位』、『水の二位』と謀り、ラクロア兵を都に引き入れたのです。  神官の暴動を口実に、人望ある『水の一位』殿の失脚を目論んで、御自害と偽り、私が駆けつけた時はすでに・・・」 『水の三位』が悔し涙をこぼす。     
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