20 襲撃 その4

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「お逃げ下さい、ルオー様。  ギリアスが真っ先に命ずるのは、『黄金のハート』ルオー様を抹殺すること。  国王の首などいくらでも挿げ替える事が出来ますが、『黄金のハート』は唯一無二の最高位の竜王神官。  ルオー様がいらっしゃる限り、ルオー様のご承認無くして竜王神殿を動かす事は大逆罪でございます」 「だが、いったいどこへ逃げよと・・・竜王様は亡くなられた。  ロードリアスはもう終わりじゃ・・・」 『風の一位』は震える両手で顔を覆った。  がっくり老け込んで考えもまとまらぬ『風の一位』と、怒りに震える『水の三位』  女官長だけが、何をすればいいかわかっていた。  街の子供の着るような、古びたズボンと上着を着せ、湯を持ってきてルオーの頭を洗い、黒っぽい液体をつけて梳る。目立つ金髪をくすんだ色に染めようというのだ。 「リドラムへお落としします。ローレル侯爵領へ。  侯爵様御一族の行方は知れませんが、生きておられればあの土地は必ず反旗を翻すはず。  私の甥が一人だけ、神殿の虐殺から逃れる事が出来ました。彼がご案内いたします」  女官長の甥は、四人兄弟全部が神殿務めだったはず・・・。 『水の一位』は再び涙ぐんだ。 「竜王様・・・竜王様の・・・お身体は・・・広場に・・・?」  ルオーが震える声で尋ねた。 「いいえ、セネカが持ち去ってしまいました。たぶん、ギリアスの処へ」  セネカ。  あいつだ。あいつが、竜王様を・・・。  ルオーは胸に抱いた天鵞絨の包みをぎゅっと抱きしめる。
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