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「甥が来るまで少しお休みください、陛下」
通された小部屋は半地下の造りで、小さな窓があった。
そっと外に呼びかけ、烏の声が聞こえるのを待つ。
小さく呼び交わし、やがてぷりぷり怒ったレイヴンが現れた。
「さんざん探し回らせやがって」
でも、見捨てずにいてくれたレイヴンに、ルオーは説明する。
「セネカ。またあいつか。胡散臭い奴だ」
「本当に、竜王様は生き返るんだね、レイヴン」
同じことを、もう、何度尋ねた事だろう。
「ああ。時間はかかるがな。
心臓をやられて仮死状態になってても、しばらくすれば傷が治って息を吹き返す。
どこへ連れていかれたかわからねぇのか。よし、必ず探し出してやる。
だが、その右手。失くすなよ。
それがないとシルヴァーンは竜になれないぞ」
失くすものかとばかり、ルオーは包みを抱きしめ、頷いた。
「んじゃ、お前はリドラムってとこへ逃げるのか。お前が殺されちゃ元も子もないもんな。
あのお姫さんに会ったら、よろしく言っといてくれや」
「一緒に来てくれないの?」
「俺の本体はまだ寝てるんだ。
長い時間この姿に集中してられないんだよ。もう限界だ。
大丈夫、また会えるさ。
このままお前に死なれちゃ面白くねぇしな。
あと二年して、竜になった俺様の雄姿を見・て・もらわ・・・な・きゃ・・・あ・・・」
烏の声が間延びして、姿が揺らいだ。
大きく欠伸して口を開けたまま、溶けるように消えてしまった。
ギリギリまで、そばにいてくれたんだ。
レイヴンも、いなくなった。
見捨てられた仔犬のようにルオーはうずくまった。
胸に抱いた物の冷たさを、重さを、ひしひしと感じる。
「竜王様・・・竜王様・・・シルヴァーン・・・」
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