20 襲撃 その4

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「甥が来るまで少しお休みください、陛下」  通された小部屋は半地下の造りで、小さな窓があった。  そっと外に呼びかけ、烏の声が聞こえるのを待つ。  小さく呼び交わし、やがてぷりぷり怒ったレイヴンが現れた。 「さんざん探し回らせやがって」  でも、見捨てずにいてくれたレイヴンに、ルオーは説明する。 「セネカ。またあいつか。胡散臭い奴だ」 「本当に、竜王様は生き返るんだね、レイヴン」  同じことを、もう、何度尋ねた事だろう。 「ああ。時間はかかるがな。  心臓をやられて仮死状態になってても、しばらくすれば傷が治って息を吹き返す。  どこへ連れていかれたかわからねぇのか。よし、必ず探し出してやる。  だが、その右手。失くすなよ。  それがないとシルヴァーンは竜になれないぞ」  失くすものかとばかり、ルオーは包みを抱きしめ、頷いた。 「んじゃ、お前はリドラムってとこへ逃げるのか。お前が殺されちゃ元も子もないもんな。  あのお姫さんに会ったら、よろしく言っといてくれや」 「一緒に来てくれないの?」 「俺の本体はまだ寝てるんだ。  長い時間この姿に集中してられないんだよ。もう限界だ。  大丈夫、また会えるさ。  このままお前に死なれちゃ面白くねぇしな。  あと二年して、竜になった俺様の雄姿を見・て・もらわ・・・な・きゃ・・・あ・・・」  烏の声が間延びして、姿が揺らいだ。  大きく欠伸して口を開けたまま、溶けるように消えてしまった。  ギリギリまで、そばにいてくれたんだ。  レイヴンも、いなくなった。  見捨てられた仔犬のようにルオーはうずくまった。  胸に抱いた物の冷たさを、重さを、ひしひしと感じる。 「竜王様・・・竜王様・・・シルヴァーン・・・」
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