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「第一王子は見込みがない」
誰もが、そう思っていた。
「あの病弱な体では、成人するまで生きられないだろう」
そう思われるのも、当然の外観だった。
今年で八歳になるのだが、痩せこけた小さな体は五、六歳にしか見えない。
淡い水色の眼と色褪せた白っぽい金髪が弱々しさを強調し、過敏な薄い肌はいつも、入浴係りの女官も触れるのを嫌がるほどの、ただれか発疹に覆われている。
式典のたび、人々が国王の横に見るのは、略式の冠の重みに耐えかねてか細い首をうなだれ、豪華な椅子に埋もれるように座って、辛そうに体を掻いている弱々しい少年。
いつも儀式の途中で真っ青になって、慌ただしく女官に連れ去られる、皇太子の姿なのだった。
母の王妃かその親族が生きていたら、少しは状況が違っていただろう。
しかし母グウェンダリナ王妃は産褥でルオーの顔を見る事も無く世を去り、北方のシンリエンとロードリアスの間に位置する王妃の祖国は、同じ頃大規模な内乱の末、王妃の一族をことごとく抹殺していた。
だが、後ろ盾を失った王妃が既にこの世を去っていた事は、ルオーにとって幸いだったかもしれない。
冷酷なロードリアス国王は、次の同盟を結ぶため、新たな王妃を迎えるためには、価値の亡くなった現王妃を暗殺しかねない男であった。
王妃が亡くなったがために、ルオーは大国シンリエンを牽制するための駒として、そのまま第一王子の地位に置かれた。年上の妾腹の兄たちや、南国出身の現王妃の息子たちがいるにもかかわらず、廃嫡されることなく皇太子となっているのだ。
成人出来るまで生きていそうもない、名ばかりの皇太子に。
現王妃の不興を買ってまで親族のないルオーの後ろ盾になろうとする貴族はいなかったので、亡き王妃の乳母だった老アンナが死んでからは、ルオーはずっと宮殿の片隅で、小さくなって生きて来たのだった。
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