第二部:秋冬の定まり。

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        4 自殺した被害者の過去が明らかとなり、捜査本部では被害者の遺影に花を添える刑事まで多数現れた。 過去の事件を扱った弁護士は、既に他界していて。 この事件に携わった刑事達は、基郎氏を殺意という一点で殺人にした後ろめたさを持っていたことが分かった。 “人を殺めた以上は、言い訳をしない” 基郎という人物は、そうゆう人間だったらしい。 だが、厳正な裁きを求める判事ないし検事、また携わった弁護士は、その基郎氏の態度も個人的な私情と理解していたフシがあるのだが。 殺意が明確に証言された以上、殺人罪を避ける訳には行かなかったという。 そして、次の日。 桔梗院弁護士がまた接見にやって来た。 送検する前の接見は、ちょっと珍しい事でも在るが。 証拠固めをする警察は、分析を進めている最中だ。 死体損壊、証拠隠滅、自殺幇助の三点についてで争うことになりそうだが、これ以上の証拠を隠滅される心配もないと思われ、柴娑管理官も接見を認めた次第である。 さて、被疑者となった大学生と面会する桔梗院弁護士だが。 「あの・・昨日、誰か来ましたよね?」 ぼんやりと無気力症候群でも患ったかの様だった彼が、自分からこう尋ねて来る。 一瞬、それに対する返事をすることを躊躇った桔梗院弁護士だが…。 「・・・あぁ、確かに来た・・様だね」 「それ・・誰・・で・すか?」 また、返答に困った桔梗院弁護士だが…。 彼が反省をするならば、法廷はやりやすいと思い。 「実は、その・・自殺した人物の親族とね。 彼が20年以上前に起こした事件の、・・・被害者遺族が見えた…」 その異質な取り合わせに、大学生の彼は酷く驚いた様に変わり。 「あ・どちらも、自殺した人の事で・・ですか?」 此処で、桔梗院弁護士はいよいよ困る。 二人の事を云うべきか、否か。 不思議な取り合わせで、殺人事件でも希の中でも希なケースだ。 事実を言ってどうなるのか、予測が着かない。
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