第二部:秋冬の定まり。

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        3 一人の若者が、身勝手な思い込みで一人の男性を追い詰めた。 その所為で、過去に犯罪を犯した男性は、自殺と云う悲しい手段で世間に詫びながら亡くなった。 若者は法律家になろうとしていたはずなのに、その自殺を他殺に偽装することまでして、遺書を持ち出した上に発見を遅らせる偽装工作までした。 短期間で捕まえられた若者が、留置場で木葉刑事より諭されたが・・。 この事件の最も大切な運命の時は、この後に待っていた。 そして、時は刻々と流れ、次の日の昼間の事だ。 眠い眼を擦ってシャワーだけ浴びて来た木葉刑事が、本部と成る会議室に入ると…。 「手塚さん、来たみたいです」 「フン、“諭しのコノハ”め」 皮肉った言葉を言った手塚刑事が、飯田刑事を含めて他の刑事達と集まっていた。 寝不足か、ぼんやりと本部となる会議室へ入って木葉刑事は、ギュルギュルと鳴るお腹を抱え。 「手塚師匠~」 「何だ?」 「帳場の弁当代って、帳場の立った署持ちでしょ? 師匠の顔に免じて、二つくださぁ~~~い」 まるで神様に拝むかの様に手を合わす。 昨夜は何かと忙しく、食事を疎かにした刑事たち。 昼まで寝れば、木葉刑事のような体格の者でも腹が空くのは当然だろう。 だが、殺人では無いが人の死んだ事件を扱う所為と、まだ仏様に成ってない為にムスッとする手塚刑事は。 「うるせぇ、このぉ税金泥棒め。 二つも三つも食いてぇならっ、テメェの自腹で食いやがれっ」 と、彼の願いを払い飛ばす。 「チェっ、師匠はシブチンだ」 ボソッと暴言を吐いた木葉刑事は、たった今に届いた弁当を取りに。 だが、地獄耳の手塚刑事だから。 「だ~れが‘シブチン’だってぇ? どれ、絶対に一個だけだぞ、俺が見張るからな」 こう言った手塚刑事がしゃしゃり出る。 集めた証拠物件の鑑定待ちが多い今、篠田班の面々は休みの織田刑事以外は全員が居て。 特に手塚刑事と親しい飯田刑事は、肩を揺らして笑って居た。 然も、朝には別件となった傷害事件の犯人が里谷刑事と八橋刑事の率いる刑事達により逮捕され、ゆったり出来る面々も弁当を貰ったりする。 その最中、こんな訳でいきなり昼から始まった為か。 ‘朝飯が無い’ 弁当を片手にボヤく木葉刑事。 手塚刑事に叱られても、ワルガキの如く舌打ちをする彼。
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