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然し、若者を諭した木葉刑事の存在感は、他の刑事達にも特殊になる。 篠田班長を筆頭に、篠田班の皆が木葉刑事を邪険にしない。 そして、それは老練な手塚刑事ですら…。
さて、不満げに座っていざ弁当を広げようとした木葉刑事だが。 其処へ、男性の声で。
「君がやったとは、恐れ入った。 全く、面倒をしてくれたものだ」
こう言うのは、低音域の渋みが溢れる男性の声。 本部では聴いた事の無い声音だから、全刑事達が一同揃って見上げた先の木葉刑事の前に立つ男性を見る事に。
飯田刑事は、相手の顔を見るなりに目を細め。
「あれは、桔梗院…」
と、小さく呟いた。
また、同じく相手を見た里谷刑事は、インテリ風ながらプライドが高い性格が溢れ出る顔の中年男性を見ると。
「う~わ、昭和の少女コミックに現れるタイプのイケメンだわ」
と、やや引いた言い方をする。
木葉刑事の前に立つのは、赤いブランドのスーツを着る男性だ。 白い肌にカラコンを入れた金色の眼をして、オールバックの頭髪をする。
その男性を見る木葉刑事は、知った顔なので。
「これは桔梗院弁護士、お久しぶりで」
如何にもインテリと云わんばかりの雰囲気を醸し出す桔梗院弁護士は、細めた眼で木葉刑事を見下ろし。
「今回、彼の弁護を私が担当する。 被疑者の彼に何を言ったか知らないが、裁判では徹底的に戦うからね」
その態度から物言いは、完全なる宣戦布告と云う処か。 然し、この桔梗院弁護士は、手練れた弁護士だ。 警察の証拠をグレーゾーンに追い落とす事から、‘灰色の魔術師’と一部から呼ばれていた。
だが、弁当に向かう木葉刑事は、大して気にもして居ないらしい。
「桔梗院弁護士」
「何かね?」
「彼がこのまま反省した態度をすれば、寧ろ情状酌量を取りやすいと思いますが?」
当たり前の意見に、桔梗院弁護士は目を鋭くし。
「まだ、自殺した被害者の事がはっきりして居ない。 殺人を犯した過去は変わらないし、どんな人間なのか解らない。 サイトに載せようとした事に妥当性が見えるならば、彼は自分の信念に従っただけだ。 ‘自殺幇助’には、値しない」
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