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さて、捜査本部の入り口となるドアを、その気持ちの勢いから突き飛ばしそうな様子で入って来たのは、小柄で化粧っ気もあまりない、中年にしても老けた印象の中年女性だ。 長いストレートの髪、丸顔の顔は可愛らしさが有りそうだが、痩せた身体が少し不釣り合いにも見える。 青色で半袖のカジュアルシャツに黒いジーンズを穿いたその女性は、刑事達を見回しながら。
「叔父を殺した人に合わせ下さいっ! 叔父を自殺に追い込んだ人は何処ですかっ?!」
声が割れんばかりに大声を出す。
驚く刑事達の中で、篠田班長が席を立ち。
「あの・・貴女は?」
と、問えば。
「自殺した男性の姪ですっ! 叔父の遺体と遺品をっ、引き取りに来ましたっ!!」
すると、これはもう戦いと察した桔梗院弁護士が彼女を見て。
「君、大声を出すのは止めなさい」
戦いの火蓋は切られたと察して、彼女を窘める。 その魂胆は、自殺した被害者の方には何らかでも非が在ると証明する為に、此処で被害者遺族をやり込んで憎しみや怒りを削ごうと云うものだ。
然し、ズンズンと会議室へ入って来た女性は、桔梗院弁護士を見返すと。
「大切な叔父を追い詰められたのにっ! 落ち着けですってっ?! 貴方は誰っ? 刑事さん?」
と、これまた対立する気が全開で在る。
敵に対して、言葉や遣り方には容赦ない桔梗院弁護士だからか。 非常に覚めた目を相手の女性に向けて。
「私は、被疑者の弁護士をする者だ」
と、堂々と宣言を。
「弁護士?」
「そうです。 自殺した被害者が、殺人で服役した事は確かだ。 貴女の叔父さんがどんな人間だったのか…」
桔梗院弁護士が語る話を最後まで聴かずに、怒りの表情を強めた女性は、桔梗院弁護士に向かった。
「弁護士っ? 叔父を自殺に追い込んだ人の弁護士っ?!!!」
女性に、強い口調で話を遮られた桔梗院弁護士は、何処か不満げに。
「そうだ」
だが、桔梗院弁護士の前まで来た女性は、怒りに染まる眼を桔梗院弁護士に向けると。
「その相手は、叔父の事を何で責めたの。 叔父が、一体何をしたのっ! 叔父がっ、その人に何をしたのっ!!!!!」
一言一言を云う事で、女性は感情に強く支配されて行く。
桔梗院弁護士は、ジェスチャーを使いながら。
「ちょっと、落ち着きなさい…」
と、冷静さを促そうとするが。
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