第二部:秋冬の定まり。

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震えながら涙を浮かべる女性は、その曖昧な言葉で更に怒り、その影響で全てがブッ飛んだ。 「うるさぁーーーい゛っ!! 言えっ、叔父が何をしたぁっ!!!!!! 叔父がその人に何をしたぁっ!!!!!!」 感情を爆発させた女性は、桔梗院弁護士に掴み掛かる。 これは不味いと慌てた刑事達が、次々と立ち上がった。 その時だ。 「何も、して無いッスよ」 緊張状態が最高潮に高まりかけた雰囲気とは、全く違う声が上がった。 桔梗院弁護士の胸ぐらに手を掛けた女性は、その声の方に手を掛けたまま左を向くと。 其処には、座ったままの木葉刑事が居て。 「貴女の叔父さんの自殺した事件に関わった刑事です。 一応、追い込んだ彼から詳しく話を聴きましたが、被害者のことを全く知らないそうですよ。 殺人を犯した人だと聴いて、周りに嘘を吐いてのうのうと生きてるのだろう・・と、勘違いしたそうです」 木葉刑事の話を聴いた女性は、絶望感を味わう様に力が抜けた。 「何で・・、なんでぇ…」 クタクタと力が抜けて、その場へと跪いた女性だった。 すると、木葉刑事はゆっくりと席を立ち。 崩れた女性へと、テーブルを乗り越える様に身を出し。 「あの・・驚いてしまわれた今に・・・なんですがね。 出来ましたら、亡くなられた被害者の事、特に過去の殺人の事を教えて下さい」 と、女性に頼んで見た。 すると、膝を崩した女性は顔を上げる。 そして、涙ながらに、木葉刑事へ言った。 「叔父は・・わたしを・・・助けただけなのに…。 どうし・・・どうしえ…」 泣き、語る言葉がはっきりしなく成る女性で。 木葉刑事はテーブルを回り込んで、桔梗院弁護士の後ろから来ると。 「なら、応接室へ行きましょうか。 其処へ座ると、服が汚れる」 女性を立たせた木葉刑事は、里谷刑事と手塚刑事に案内を任せる。 そして、まだ入り口の外に居る、黒いスーツ姿ながら日焼けして無精ひげを生やす、白髪の老人の方へと向かった。 その沈痛な雰囲気からして、明らかにあの女性と関係が有りそうな感じで在る。 また、自殺した被害者の霊が、泣いた女性の片隅から立つと、そのスーツ姿の人物の元に向かった。 (間違いない。 この人も、関係者だな) 確信する木葉刑事が、スーツ姿の老人に近付くと。 幽霊の被害者が老人へと頭を下げ。 スーツ姿の老人が、木葉刑事に頭を下げて来た…。
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