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そして、応接室に案内された女性と老人の二人に、木葉刑事や里谷刑事が対応する。 さして広くない応接間だが、冷房の効いた部屋にて三人用の白いソファーに座った二人。 一人用の椅子に座って対峙した木葉刑事は、二人を見る。 出入り口の方には、一人用の椅子に里谷刑事が座り。 手塚刑事と飯田刑事は、窓や壁に立つ。
だが、開いた窓の外には、桔梗院弁護士そっと立って居た。
署員の女性が冷たい麦茶を置いて出て行くと、木葉刑事は寄り添う様な二人を見て。
「お二人は、ご家族ですか?」
こう問うと、二人のうち人生に疲れた様な印象の老人が、首を左右に動かし。
「刑事さん。 私は、約20年以上前、息子を殺された者です」
と、物憂げにも近い重々しい声音で口を開く。
この話に、話を聴く刑事達も、外の桔梗院弁護士も、その目を見張った。
チョット驚く取り合わせの二人が来たと知った木葉刑事は、
「あ・貴方の家族を殺害したのが・・今回の被害者ですか?」
と、尋ねると。
「そうです」
老人は簡潔に即答し、更に。
「だがね、あの事件は殺人だが、あれは正当防衛か、悪く言っても過剰防衛だったよ。 自殺した彼があの時に私の息子を殺さなければ、その後の結果は・・最悪の地獄になっていただろう」
かなり複雑な事情が在ると感じられた刑事達も、桔梗院弁護士も、話は簡単なものではないと察する。
そして、
“これは、想定外にして、良くない事態だ”
そう感じて軽い溜め息を漏らした木葉刑事は、不可思議な取り合わせの二人を見比べて。
「被害者遺族と加害者遺族が、ご一緒に・・。 ですが、何故?」
すると、気落ちして泣く女性に代わり、老人は言う。
「事件を聴いて、私が彼女に言って強引に着いて来たんだ。 私も、此方の彼女と同様に、どうして若者が彼を責めたのか、それを聴きたい」
木葉刑事は、その理由も含めて話す前に、全ての根元と云うべき過去の殺人事件を聴いた。
窓の外に立つ桔梗院弁護士は、今回の弁護の重要な部分に成ると耳を澄ませる。
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