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「こんな所で何やってるの?」 そんな私を見つけたのが恵一だった。私の住むマンションの同じ階に住む男の子。 ほとんど話したことはなかったけれど、時折マンションで見かけたことがあった。 私はゆっくりと顔をあげた。きっと死んだ魚のような目をしていたと思う。 「ようなじゃなくて、本当に死んだ魚の目だったよ。ちょっと怖かったぐらいだよ」 後に恵一にこの話をしたらそんな事を言われた。 とにかく。恵一は座り込んで返事もしない私に話しかけてきた。私は返事することすら億劫でそのまま恵一を無視して再び膝に顔をうずめた。 「こんな所にいたら風邪ひくよ」 私の態度に怯むことなく恵一は遊具の中に入ってきて私に手を差し伸べた。 「いいの。放っておいて」 「駄目だよ。風邪ひいちゃう。風邪ひくと頭は痛くなるし、とっても辛いんだよ」 「いいの。皆私のことなんていらないんだ。風邪ひいて死んじゃえばいいんだ私なんて」 「駄目だよ。君のこといらないなんて誰も思ってないと思うよ」 「なにもしらないくせに!」 しつこいほど私に絡んでく恵一に苛立った私は不満と不安を恵一にぶつけてしまった。 はっきりとは覚えていないけれど、当時思いつく限りの罵倒を恵一に殴りつけるように押し付けた。 恵一はそれを困ったような顔でただじっと聞いていた。 私が疲れて言葉を吐き出すのをやめるまでずっと黙って聞いていた。 ぜえはあと肩で息をして言葉が途切れる。いつの間にか私は泣いていた。 抑え込んでいた感情を吐き出したせいかもしれなかった。ああ、そうか。 私は悲しかったんだ。寂しかったんだと初めて気持ちの整理ができた。たた漠然とした不安に押しつぶされそうになっていた私は自分の気持ちと初めて向き合うことができた。 「……誕生日ぐらい祝ってくれたっていいじゃん」 私の本心だった。別に両親が嫌いだったわけじゃない。たった一つのわがままだった。 それが私の気持ちの全てだった。
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