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「申し訳ないけど。今年はプレゼント用意できなかったんだ」 「いらないよ。そんなの」 私はベットサイドの椅子に座りながら言う。もう声が震えるのを抑えることはできなかった。 「でも、今年が最後だからね。一つ、物じゃないけどプレゼントがあるんだ」 その言葉に私は感情を抑える事ができなかった。 「最後って言うのやめてよ! さっきのは嘘! ずっと祝ってよ! 私の為にずっと私の誕生日を祝ってよ! 生まれてきてくれてありがとうって言ってよ!」 泣きながら縋るように恵一に詰め寄る。そんな私の頭をそっと恵一が触る。 「僕も、本当はそうしたかったんだけどね。無理そうなんだ。僕はきっとあと1年生きられない」 「そんなことない!」 「ごめん」 「謝るな! 謝るんじゃない!」 恵一は出会った時と同じように困った顔で私を見つめていた。恵一の細く弱弱しい手が何度も私の頭をなでる。その力の弱さが私に現実を突きつける。 「僕からのプレゼント受け取ってくれないかな」 どれくらい泣いていたのか分からない。泣きつかれて嗚咽が短くなってきた頃、恵一が飛び切り優しい声で囁く。 ああ。私は恵一のこの優しい声が好きなのだ。初めて声を掛けられた時から。ずっと。 私が頷くと。恵一は私の肩を両手でもって二人の距離を少しだけ開く。その距離が私と恵一との距離だと思うと切なくなる。 いつだって、私が恵一を思うばかりだ。私がいつも一方的に恵一を好きなだけだ。 恵一は私に対して優しい。それはまるで家族に対して接しているようで、まるで妹のように私の事を思っているのだろうと感じていた。 「僕は君にずっと伝えたいことがあったんだ」 そよ風のように心地よく弱弱しい声で恵一が私を見つめて言った。 「君の事が好きです」 「え?」 私は間抜け面で聞き返した。 「君の事が好きです」 恵一は同じ言葉を繰り返した。 「ずっと前から、出会った時から。君の事がずっと好きでした」 その言葉の意味を理解するまで数秒かかった。理解して。 涙が再びあふれ出した。
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