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「春恋見た?」
「もう、あの告白、ドキドキした―。」
春恋とは、現在放送されているドラマのタイトル。
高校生の間では大人気のドラマで、あの子もこの子もドラマの話ばかり。
人気の原因は、主役の青山健吾。これが、かっこいいのなんのって大騒ぎ。
若手イケメン俳優が恋愛ドラマの主役をやると、こうなっちゃうんだねー。
「夏美はどう思う?」
「え?何が?」
「昨日の告白。」
そんなことを突然聞いてくるのは友人の由梨。
私は別に、誰からも告白なんてされていないのよ。だから告白がどう?と聞かれても、と言っている間に
「僕がそばにいる、それだけじゃダメかな?」
と主役の真似をしだす由梨。
「あー、もう消えてなくなりそう。」
と毎週決め台詞のような感想を言うのよこの子。
あっ、念のために一言。
この『消えてなくなりそう』とは、ドキドキしてうっとりしてとろけて自分の心がどこか遠くに飛んでいきそう、なくらいに甘い言葉を浴びせられたという意味なんだけど、実際に由梨が消えてなくなるわけではないから、変な誤解を生まないように注意してね。
「青山様、一度は触れてみたい。」「告白の言葉はよかったけど、その後急に態度変わったじゃん。」
「もう、夏美ったら。それがいいんじゃんか。」
「そういう男って、女を弄んだりするもんじゃない?」
「青山様はそんな人じゃないって。あの笑顔、あの優しさ、あの抱きしめかた。ツンデレなところも、素敵。」
ここはステージか!というくらいの大きな立ち振る舞いを見せてくる。これ、将来は女優になるだろう、なんて予想してみる。
芸能人なんかに夢中になっちゃって、かわいいかわいい。
私なんかは芸能人なんてなんとも思わないんだけどねー。特に俳優。あれ、演技だから。仕事でやってるんだからね。
「なんで、夏美はいつもそうなの?」
「なにが?」
「青山様のことが嫌いなの?」
「そんなんじゃないよ。面白い役柄だと思うよ。」
「役とかそういうのじゃなくて、青山様を受け止めようよ。」
「だって、あれは物語で・・・。」
「夏美って急に大人っぽいこと言い出すよね。本当に高校生?」
これ、冗談を言っているようだけど、実は、冗談ではなかったりするんだよね。
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