恋の病は治らない

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■■■■ 私の名前は日下部 杏(くさかべ あんず)。 20歳の大学生、彼氏いない歴に関しては聞かないで欲しいところだ。 出身は地方だが、東京の大学に進学した上京組である。 私には家が隣同士の幼馴染みがいる。 柄沢 棗(からさわ なつめ)という名の、どこか柴犬に似ているほんわかした男の子だ。 いつもヘラヘラしていて、頼まれたことは断れない困った人は放っておけないお人好し。 彼も私と同じように上京組で、製菓の専門学校に進学した。 私はこの超がつくほどのお人好しバカに、物心つく頃から恋をしていた。 昔から勉強だけが取得の真面目でお堅い奴に分類されて尚且つ性格もキツイため友だちがほぼいなかった私に対しても、他と区別することなく普通に接してくれた棗。 「一緒にいたらあんたまで仲間外れにされるかもしれない」 そんなぶっきらぼうな私にもふにゃりと笑って、「杏ちゃんは僕の知らないことたっくさん知ってるし、一緒にいるの楽しくてすきだからいいのー」なんて言ってのける奴だった。 クラスも違うのに何かにつけて私と行動を共にする棗のことがいつの間にかすきになっていて、モテるのに一向に彼女を作ろうとしない彼を隣で見ながら、もしかしたら彼も私をすきなのだろうかなどと思っていたこともあった。 今思えば自意識過剰も甚だしい。 あの頃の自分を思い出すと叫びだしたくなるくらいに恥ずかしい勘違いをしていた。
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