新学期

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新学期

わたしには唯一の楽しみがある。毎朝7時45分に来る電車の3両目。入って真ん中の手すりにもたれかかってる…、今日もいた。わたしは手ぐしで前髪を整えるとふうっと深呼吸をして一目散にあの人のとこへ向かった。 「八代先輩!今日からですね、新入生の体験入部」 「今年は何人入ってくれるかなー…。選手もだけど、マネも欲しいよな…2年立花1人だけだし…」 「そうですね、なんか…待ち遠しいです!」 こうやって何気ない話をする15分間。先輩と唯一2人で話せる時間だ。今日は体験入部の日なので先輩はいつもより活気が立っていた。先輩はサッカー部の部長で、わたしはマネージャーをしている。中学の時も先輩と同じ部活に入っていたので少しは親しい方だと思う…。 ー次は????駅、????駅~、お降りの方は足元に注意してー ガタンッ 電車が大きく揺れバランスが崩れそうになる。あ、ダメだ…倒れるかも…。とっさに掴もうとしたつり革を見事にすり抜け、間一髪のところで誰かが傾いたわたしの体をふわっと持ち上げた。
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