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「先輩、大丈夫ですか?」
「あ、うん…ありがと。ごめんね」
わたしを先輩と呼ぶのは中学の時の後輩、千紘君。背は私より低かったはずなのに …いつの間にこんなに大きくなったのか。
そして、いつまでこの手を。
「ーっ。あのー千紘君?そろそろ手を離して欲しいなって」
「何でですか」
「何でって、その…電車っ、電車もうすぐ着くから…ね?勘違いされたくないし…」
「…誰に」
「…っ、飴あげるから」
「……分かりました。はちみつレモン味あります?」
「あるよ」
腰に回っていた手をパッと離し、受け取った飴をカラコロと舐め始めた。
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「先輩、背…縮みました?」
「ちょ、何で…縮んでないしっ!千紘君がデカくなったんでしょ?」
「さっきつり革届いてなかったじゃないですか。あれ見事にすり抜けてましたね」
ふはっと笑いからかってくる。あれ見られてたのか。笑った顔は可愛い。嫌味さえ、これさえなければ…可愛い後輩なんだけどなぁ。わたしは渋々思いながら、少し下がった靴下をあげる。そして、
ー右側のドアが開きますご注意ください
再びアナウンスが流れると、ドアが開き一斉に乗客が降りだした。
「あ、先輩着きましたよ。降りましょう」
わたしは八坂先輩に声をかける。
「じゃあ、立花。また部活で」
先輩はそう言うと、階段を降りようとしている部活仲間の方へ走っていった。
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