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「君、はぐれないでよ。こんな大きな迷子、恥ずかしくて迎えにいけないからね」
隣からしれっとひどいことを言ってくる紫音に、皇輝はむくれて言い返した。
「じゃあ、ちゃんと手つないでてくれよな」
「・・・・え、ここで手つなぐの?」
わんさか人がいるとはいえ、いくらなんでも男同士が手をつないでいたら目立つ。
ただでさえ、紫音は近寄りがたいほどの美貌で周囲の視線を集めるし、皇輝も少しきつい目をした端整な顔立ちと180㎝以上の長身が人目をひく。
そう思ってためらったが、皇輝の目が不安に揺れるのを見て、紫音は「うわなに、ほんとに迷子になりそうなの?」と突っ込んでしまった。
「悪かったな。・・・・・俺、人混みはまだちょっと・・・目、開けてんの怖いし」
ぷいとそっぽを向かれて、紫音はしまったと思う。
紫音の大切な人は、紫音が飼っている魔曰く『乙女のごとき繊細さ』なのだ。
そういえば、いつだったか、妊婦のごとき繊細さとも言われていたっけ。
「ごめん」
紫音が皇輝の手をきゅっと握ったら、皇輝が振り返るよりも早く周囲からどよめきと、「きゃーっ」と黄色い悲鳴があがる。
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