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「え、なに?!」
突然のざわめきに、皇輝がおののく。
紫音は肩をすくめて、「もうすぐゲートが開くんだよ」と返した。
「そうなのか。すごい盛り上がりようだな」
皇輝がゲートの向こうをそわそわと見る。
つないだ手に力がこもるのを感じて、紫音はくす、と笑った。
それを見た周囲から、また倒れんばかりの高い悲鳴があちこちであがる。
・・・・・ものすっごく、うっとうしいな、この視線。
す、と表情を消して、紫音はけぶる睫毛の奥から冷ややかな瞳で周囲を一度だけ睥睨した。
ほんの少し、『邪魔なんだけど』という殺気をこめて。
しん、と周囲が静まり返る。
それに満足して、紫音はひとつ瞬きをしてから、もとの柔らかい表情に戻す。
それから何気なく皇輝を見上げたら、ばちっと目が合った。
「あ・・・・・」
「あんた、今なんかコワイことしただろ」
「いや、ちょっと、あんまり見られてるからつい」
決まりが悪くて目を泳がせながら言い訳をしたら、皇輝が呆れた顔をして、紫音の頬をくいっと手の甲で軽く押さえた。
「当たり前だろ。こんだけ綺麗な顔しといて、見るなって方が無理だし。けど、あんた美人すぎて、コワイ顔したらすっげーコワイんだからな。周りの人びびらせたらダメだって」
「・・・・・・・ハイごめんなさい」
よし、と皇輝が朗らかに笑う。
紫音は触れられた頬が熱くなって、自分の服の袖でこしこしとこすった。
ゲートが、開いた。
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