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ランド内の地図を見ながら目的のアトラクションに向かって歩いているうちに、皇輝はどんどん速足になってしまって、気がつくと紫音の手をぐいぐい引っ張っていた。
あっと思って、振り返る。
何度もそれを繰り返したが、そうすると決まって、紫音はにっこりと微笑んだ。
皇輝が振り返る度に微笑を返してくれる紫音は・・・髪を風に乱しているのも、少し息があがって頬が上気しているのも、なんだかとても・・・。
皇輝はその先の言葉を思い浮かべるのが照れくさくて、ぱっと前を向く。
秋の行楽シーズンだからか、平日なのにどこもかしこも人でいっぱいで、皇輝は紫音の手をぎゅっと握って、ゆっくり歩きだした。
ふわっと近くから風船が飛んで、くるりくるりとゆるい弧を描きながら昇っていく。
俺もあんな感じだなー、と皇輝は空を見上げた。
足元がふわふわしている。
ケーキの上に立ってるみたいだ。
風船の向こうに、シンデレラ城が見えた。
シンデレラのストーリーくらいは皇輝でも知っている。
ちら、と横目で紫音を見る。
それに気がついた紫音が「うん?」と小首を傾げた。
ー 絶対、こいつの方がキレイだよな。
鏡よ鏡、この世で一番美しい・・・は、違う話だったっけ。
そう思ってから、爆発してしまえ俺の脳ミソ、と恥ずかしさのあまり心の中で叫んでおく。
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