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「・・・・・・どうして?」
紫音は、とてもそうは見えない、いつも通りの柔らかい笑顔を浮かべている。
横でゆるく束ねてある髪を指先で梳いたら、紫音は気持ちよさそうに目を閉じた。
「なんでだろうな。あんたの顔見てても分かんないんだけどな」
夜だしいいか、と皇輝は紫音の肩をそっと抱き寄せる。肩にもたれてきた紫音は、腕の中に抱き込んだら、思った以上に呼吸が早くて浅かった。
「だいじょうぶか」
「どうして分かった?」
「こうしたくなったから」
抱きしめる腕に力をこめたら、紫音の腕が背中にまわって、首筋に顔を埋めてきた。
「ごめん。うまく隠してたつもりなんだけど」
「ああ、全然分かんなかったぞ」
「じゃ、なんでバレたの」
「だから、こうしたくなったからだって。あんたが弱ってたり具合悪いとな、こうやって抱きしめたくなるんだ。だから分かる」
「・・・・君はまたそういうこと言って。熱出るからやめて」
「悪い。無理させて。・・・けどたぶん、俺があんたの体調を理由に帰るとか言ったら、しょげるだろうと思ってさ」
「・・・・座ってればだいじょうぶだから」
「もたれてていいからな」
「そうさせてもらうよ」
その言葉通りに、紫音が身体の力を抜いた。
くたりと皇輝の胸に身を預けて目を閉じる。
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