四章

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「なんだか、また気分が悪くなってきた」 「大丈夫ですか? ひどく、うなされておいででしたからね」  そう。ひどい夢を見た。 「……寝言を言ったかな?」 「言った。言った。悪魔とか、死ぬとか、つれてくなとか、神さまとか。あんた、よっぽど死にたくなかったんだね」と言ったのは、エミールだ。  ハシェドが答えないのは、なぜだろうか。  よくおぼえてないが、言ってはいけないことを口走らなかっただろうか?  ワレスは不安になった。  エミールは気づいてないようで、まだ続ける。 「大変だったんだよ。体をあっためなきゃいけないってんで、あんたのこと、ずっと抱いてさ。おぼえてる?」 「おぼえてるわけないだろ。それより、食事だ。エミール」 「はいはい」  エミールが出ていくと、部屋には、ハシェドと二人きりだ。いつのまにか、アブセスとクルウもいなくなっていた。  二人きりなのをいいことに、ワレスはカマをかける。 「おれが夢で見たときは、おまえだったような気がしたんだが」 「何がです?」 「おれを抱いて、となりにいたのが」 「ああ……すいません」 「なんで、あやまるんだ?」 「それは……隊長は、おれにさわられるのがお嫌いのような気がして」 「おれがいつ、そんなことを言ったんだ?」 「いや、言われたわけじゃないですが……たいていのユイラ人はそうですから」  ワレスは手招きした。  ためらうように、ハシェドは枕元の椅子にすわる。 「おれは、おまえの太陽の香りのする肌が好きだ。前にも言ったはずだ」  ワレスはよこたわったまま、寝具のなかから手をのばす。ハシェドの手をにぎりしめた。 「夢のなかで、こうして手をにぎってくれたな? 嬉しかったよ……そう。とても、心細い夢を見てたから」  ワレスはハシェドの手を、寝具のなかへ引きこんだ。  悲しい夢を立て続けに見たから、つい、甘えてしまった。  ハシェドは顔をしかめた。  不愉快(ふゆかい)なのを我慢しているように見える。 「ハシェド?」  ハシェドの手が、するすると逃げていく。  思わず、追いかけて手を伸ばす。にぎりしめようとすると、サッとかわされた。 「……ハシェド」 「あ、いえ……すいません」  ハシェドは動揺している。 (やっぱり、そうなのか。何か口走ってしまったのか? ハシェドに軽蔑(けいべつ)されるようなことを?)  たとえば、あの寒い冬の日のことを……?  気まずい数分。  ハシェドが思いきったように口をひらく。 「ワレス隊長——」  言いかけたときだ。  ドアをたたく音がした。  メイヒルをつれた、ギデオン中隊長が入ってくる——
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