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雨宮と深雪の部屋にたどり着き、眠っている雨宮を起こさないようになるべく注意しながら、東雲がベッドまで深雪を運ぶと、慣れているのか晴海がてきぱきと氷枕やらなにやらいろいろ用意してくれた。
「すみません……」
途中、目を覚ました深雪が熱っぽい顔で申し訳なさそうに呟いたのを、晴海が笑って受け止めた。
「そんな顔するなって。病人は、大人しく寝てればいいんだよ」
ペシリと額に冷たいタオルをのせてやり、安心させるように告げた。
深雪が眠りに落ちたの見届けてから、晴海が東雲とともに部屋を出ると、東雲がポツリと口を開いた。
「……晴海」
「なんだ?」
振り向いた晴海は、この世の終わりみたいな深刻な表情をしていた東雲と目が合って息をのんだ。
そんなに深雪が心配なのか、とか、インフルエンザだからちゃんと治る病だし、不治の病とかじゃないから、そんなおまえが死にそうな顔するなよ、とか一瞬で様々な考えが晴海の脳裏をよぎった。
東雲は、何か言いかけてはためらうように口を閉じ、言いにくそうに視線をさまよわせ、やがて絞り出すように低い声音で呟いた。
「…………看病の仕方を、教えてくれないか」
晴海は笑った。
***
翌日の朝カフェにて。
「――雨宮と深雪、やっぱりインフルだってさ」
店の前を掃き掃除しながら言った円花に、同じく箒を手にした風雅があちゃーと呟いて眉根を下げた。
「ついに来たかー……」
「看病している晴海と東雲も心配だな……」
「そうだなー……感染るからなーアレ」
店は大丈夫かな、と呟いた風雅に、換気とかしてるし大丈夫だろ、と円花は軽く返す。
そう油断してると感染すんだよな、とぼやいた風雅は箒の手を止めて、晴れ渡る青空を見上げた。
「俺、今までかかったことないんだよなー」
「予防接種してるから?」
「いや、してなくても。周りの奴らがみんな感染しても、何故か俺一人だけ無事だったこととかある」
ドヤ顔で言い切った風雅を横目に、円花は感心したようにボソリと呟いた。
「……馬鹿は風邪ひかないってホントなんだな」
「オイ。今なんか失礼な事言っただろ」
「気のせい気のせい」
疑いの眼差しを向ける風雅の視線から逃れるように、円花は顔をあさっての方へ向けると、さっさと終わらせて中入ろうぜ、と告げて掃き掃除の手を再開させた。
◇
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