アオイ

3/6
前へ
/61ページ
次へ
カレンダーには他にも兄や自分の学校の予定、母のハンドメイド小物関連のメモがされている。 「あっ!一件発送今日までだった!いけない、急がないと!」 慌てた様子で母は荷物を片手に玄関へ向かう。 「葵衣、カレー温めといて!ご飯炊けてるから!」 「はーい」 母は出来上がった小物をネットで出品している。母によると『人気作家』らしいが、こうして巻き込まれるのは勘弁してほしい、と葵衣はいつも思っている。 確かに、母の作った小物はなかなか良くできている。 でも、せめて、その、情熱のほんの少しを食事に回して欲しい。 一度に大量に作られるため、もう三日目となったカレーライスにうんざりしながら、葵衣はプリントを片付けた。 窓の外には干しっぱなしの洗濯物。 しょうがないな、と言いながら、父がそれを取り込んでいる。 ×××××××× 「おい、洗濯物、取り込んどいたぞ」 そんなの、見ればわかるじゃん。と葵衣は心の中だけで思う。 リビングの片隅には畳まれずに積まれた洗濯物があった。 「ありがとう、パパ」 食卓にはカレーライスしか並んでいない。せめて、サラダくらいつけてよ、専業主婦なんだから、という言葉と麦茶を葵衣は一緒に飲み込んだ。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加