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カレンダーには他にも兄や自分の学校の予定、母のハンドメイド小物関連のメモがされている。
「あっ!一件発送今日までだった!いけない、急がないと!」
慌てた様子で母は荷物を片手に玄関へ向かう。
「葵衣、カレー温めといて!ご飯炊けてるから!」
「はーい」
母は出来上がった小物をネットで出品している。母によると『人気作家』らしいが、こうして巻き込まれるのは勘弁してほしい、と葵衣はいつも思っている。
確かに、母の作った小物はなかなか良くできている。
でも、せめて、その、情熱のほんの少しを食事に回して欲しい。
一度に大量に作られるため、もう三日目となったカレーライスにうんざりしながら、葵衣はプリントを片付けた。
窓の外には干しっぱなしの洗濯物。
しょうがないな、と言いながら、父がそれを取り込んでいる。
××××××××
「おい、洗濯物、取り込んどいたぞ」
そんなの、見ればわかるじゃん。と葵衣は心の中だけで思う。
リビングの片隅には畳まれずに積まれた洗濯物があった。
「ありがとう、パパ」
食卓にはカレーライスしか並んでいない。せめて、サラダくらいつけてよ、専業主婦なんだから、という言葉と麦茶を葵衣は一緒に飲み込んだ。
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